米ファスト・カンパニー

米グーグルのハードウエア製品を作るデザインラボに、日経クロストレンド提携誌の米ファスト・カンパニーが“潜入”した。メディアとしては世界初。同社従業員すら大半が立ち入り禁止のエリアだ。独自の世界がそこに広がっていた。

グーグルのデザインラボにメディアとして初めて入った(写真/Shutterstock)
グーグルのデザインラボにメディアとして初めて入った(写真/Shutterstock)

 米カリフォルニア州マウンテンビューにあるグーグル本社には、大半の従業員さえ立ち入り禁止の建物がある。総面積6500平方メートルのデザインラボには約150人のデザイナーが働いている。エンジニア主導のグーグル本社の文化とは離れたところで、工業デザイナー、アーティスト、彫刻家が自由にコラボレーションをする。バイスプレジデントのアイビー・ロス氏の指揮下、数十件の極秘プロジェクトが進められている(実際のラボ内の様子はオリジナル記事参照)。

 ハードウエアデザインのトップを務めるロス氏は元宝飾品デザイナーで、スマートスピーカーの「グーグルホームミニ」から、スマートフォンの「ピクセル」の遊び心たっぷりのシリーズまで、同社のハードウエア進出を率いてきた人物だ。明るく、自由奔放なロス氏の態度は、世界屈指の有力企業のデザイン幹部というよりは、むしろ高校の美術教師か、クリスタル製品のブティックのオーナーを思わせるだろう。この日は、ビル内への立ち入りを許された初のジャーナリストとして筆者を案内してくれた。ロス氏はこの空間を、グーグル経営陣からの「巨大な贈り物」と呼ぶ。

 グーグルはエンジニアの会社であり、ハードウエア、ソフトウエアのデザインで世に認められることはまれだ(時には、デザインのせいで嘲笑を浴びることもある)。だが最近、スンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)は、グーグルの事業にとってデザインがいかに重要になったかを率直に語るようになっている。

 同社はこの数年、携帯端末からスマートスピーカーまで、世界でも人気の電子機器を開発してきた。だが、18年6月にデザインラボがオープンする以前は、数が増える一方のハードウエアデザインのチームは多くの作業を文字通りガレージで行っていた。これほど重要なグーグルの業務にとって、最高の環境では決してなかった。

ソフトでミニマルな工業デザインの美学

 そこで、ロス氏はグーグルの建物を手掛けてきた建築事務所Mithun(ミスーン)と協力し、新しいものを作ることにした。ソフトでミニマルなグーグルの工業デザインの美学の背景となる空間だ。

 「このフレームワークはかなり中立な色になっている。真っ白なキャンバスだからこそ、この空間を変えるのは、私たちが考え出す製品、材料、その色、機能だ」とロス氏は言う。

 「私が最初に言ったのは、『明かりが必要だ』ということだ」とロス氏は振り返る。「建物によってはスクリーンを見るためにプログラマーが暗さを必要とするのに対し、私たちには明かりが要る」

 ラボのエントランスは2階まで吹き抜けになった天窓付きのアトリウムで、軽い打ち合わせのために座り心地のいい椅子とコーヒーテーブルが並んでいる。カバ材でできた階段を上ると、書籍でいっぱいの資料室がある。デザインチームのメンバーは全員、自分に大切な文献を6冊持ち寄り、なぜ重要なのかのメッセージを書き込んだ。「私たちは世界の情報をデジタル化した会社だが、デザイナーは時折、モノを実際に手に取る必要がある」とロス氏は説明する。

 デザイナーがウインドーショッピングできるようにラボの配置が時折変えられる。アトリウムをぐるりと取り囲む2階の通路は、高級ショッピングモールのようだ。片方に目を向けると、色彩研究室のガラスの壁が見える。反対側には材料研究室のガラスの壁がある。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>