
ZARAは7月下旬、地球環境に配慮した生地とリサイクル技術の採用などを柱とするサステナビリティー重視の企業戦略を発表した。ファストファッションは捨てられる衣服を増やすとの指摘があるなか、業界大手の同社がどこまで切り込もうとしているのか。
2018年秋のニューヨーク・ファッション・ウイークは、どこを見てもまさにタイダイ(絞り染め)だらけだった。プラダからステラ・マッカートニー、プロエンザ・スクーラーまで、数多くのブランドがタイダイのドレスやTシャツをモデルにまとわせ、ショーの舞台へ送り出していた。
そして19年春。ZARAの店舗の棚には、スパンコールがちりばめられた39.99ドルのタイダイドレスや29.99ドルのタイダイショートパンツが並び始めた。年間売り上げ200億ドルのZARAは、ファストファッションの芸術を開拓し、完璧に磨き上げた。
ただし、ファッション産業がより環境に優しい商慣行へと移行していくなか、次のように問うてみる価値があるだろう。ファストファッションは本当の意味でサステナブル(持続可能)になり得るのか──。
ZARAを手がけるスペインのインディテックスは、それが可能だと考えているようだ。同社はこのほど、マッシモ・ドゥッティ、プル・アンド・ベアを含む8つの傘下ブランドすべてに関わる野心的な新サステナビリティー計画を発表した。
この計画はファッション産業の環境汚染を減らす大きな取り組みの一環だ。この数カ月、ナイキからギャップに至るまで多くの巨大ファッションブランドが、よりサステナブルな材料を使い、カーボンフットプリント(製造から廃棄まで製品ライフサイクルでの二酸化炭素排出量)を削減する似たような戦略を公表している。
だが、問題が1つある。はやりの洋服は寿命が短いことだ。一例を挙げると、冒頭で紹介したZARAのタイダイの洋服は、次のトレンドのために店頭のスペースを空けるべく、今では30~50%引きのセール価格で販売されている。
アパレル業界は、地球上に暮らすわずか70億人のために、毎年1500億着以上の洋服を生産しているといわれる。過去15年間で洋服の生産量は倍増した。その一方で、衣類が処分されるまでの平均着用回数は36%減少したとのデータもある。多くの洋服は捨てられるまでに7~10回しか着用されないというのだ。
このため、ZARAがもっとサステナブルになりたいのであれば、衣類の生産方法だけでなく、洋服のデザインも考え直す必要があるかもしれない。
野心的なサステナビリティーの目標
インディテックスにとって計画の要は、衣類を作るために使う生地を全面的に見直すことだ。同社は25年までに、全社で使われている綿布、亜麻布、ポリエステルをすべて、有機的かサステナブルなもの、またはリサイクルされた生地にすることを公表した(この文脈において、「サステナブル」の内容を同社に尋ねたところ、広報担当者は、こうした繊維のための栽培・生産において、エネルギーと水に優しいプロセスを優先することだと語った)。
インディテックスは、新しいリサイクル技術への投資も計画している。すでに400万ドル規模のプロジェクトで米マサチューセッツ工科大学(MIT)と協力し、クリーンエネルギーを利用して古い衣類から繊維を回収する新しい方法を研究している。
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