チャイルディッシュ・ガンビーノに独占取材、ARアプリの舞台裏(画像)

グラミー賞のラッパー「チャイルディッシュ・ガンビーノ」ことドナルド・グローバーに、クリエイティブな世界へAR(拡張現実)を持ち込む狙いを直撃取材。大手ブランド企業こそARを活用すべき理由も明示される。

 「チャイルディッシュ・ガンビーノ」の名で知られるアーティストのドナルド・グローバーに、新曲「アルゴリズム」の狙いや、新曲を軸にしたAR(拡張現実)アプリを制作した意図を尋ねてみた。返事は簡潔だった。「アルゴリズムを信じろ」──。

クリエーティブな世界はARと相性がいい(写真はイメージ、写真/Shutterstock)
クリエーティブな世界はARと相性がいい(写真はイメージ、写真/Shutterstock)

 だから、信じてみることにした。アプリを立ち上げ、顔の前に置いて、グローバーの世界へ入る扉を開けてみた。すると、周囲に洞窟の光景が現れてくる(具体的な見え方はこちら)。新曲アルゴリズムの長い序奏が聞こえてきて、ビートと洞窟の音(水が滴る音や岩が動く音)だけが鳴り響く。

 筆者は、洞窟の壁を探し回り、「グリフ(象形文字)」を見つけるようアプリ上で指示された。ピントを合わせると、グリフが動き出し、洞窟の地面に光線が送られる。人々が踊り、動物が走り回る。すると、まもなくチャイルディッシュ自身のアバターが姿を現し、生き生きと踊り始める。

 グリフをすべて見つけると、洞窟が自分の周りで崩壊し、ふと気づいたら洞窟の人や動物と一緒に宇宙空間に浮かんでいた。そこで曲が本格的に始まり、チャイルディッシュが「みんな、体を動かして…」と歌うのが聞こえてくる。幅の広い光線が惑星と惑星の間を走っていく。

 デザイナーたちはここに、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」の「モノリス(石柱)」のモチーフを持ち込んで、「スターゲート・シークエンス」の視覚効果を思わせるような映像も盛り込んだ。

 AR体験のために、洞窟と宇宙空間という2つの舞台を選んだのはなぜか。グローバーに聞いてみた。「洞窟から宇宙へ至る旅は、人類の物語のように感じる」と返ってきた。なるほど、全くその通りだ。

クリエイティブな世界はVRよりAR

 この視覚的なテーマは、2018年にニュージーランドで開かれた音楽フェスティバル「PHAROS(ファロス)」でのコンサートから生まれたもの、とグローバーは説明する。コンサートは巨大なドームの中で開かれ、没入型3D画像がドームの天井に投影された。「今回のアプリはそのアイデアの進化だ」とグローバーは言う。

 PHAROSでの体験は最初にVR(仮想現実)へ応用した。が、クリエイティブな世界を表現するのにはARの方が向いている。「拡張現実は現実とデジタルの世界の間の壁を取り払ってくれる」とグローバーは言う。

 「PHAROS AR」と呼ばれる新アプリは、デジタルと現実世界で一定のインタラクティブ(双方向)な機能を盛り込んだ。例えば、洞窟内のグリフをタップして起動させることができる。

 (スマートフォンなどのカメラを通して見える)周囲の現実世界がゆっくりと洞窟の世界に溶け込んでいく様子には、説得力がある。これは、VR体験で感じる閉そく感や没頭感とは対照的な感覚だ。

 PHAROS ARは、チャイルディッシュと制作チームからの依頼で、デジタル制作会社メディアモンクスが米ユニティー・テクノロジーズ(以下、ユニティー)の3Dエンジンを使って設計したものだ。