高級スキンケアブランド「SK-II」が、人間そっくりに見えるCGのブランド大使を投入する。名前を「Yumi(ユミ)」という。パソコンなどを経由して世界のSK-IIファンに肌のお手入れなどをアドバイス。世界に先駆けてまず日本で“起用”する。自然なやり取りのためAI(人工知能)活用で自然言語生成エンジンを視野に入れるという。

 米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が高級スキンケアブランド「SK-II」で、新しい“ブランド大使”を迎え入れる。名前を「Yumi(ユミ)」という。といっても通常の人間ではなく、デジタルヒューマン、バーチャルインフルエンサー軍団の最新メンバーである。ブランドの顔として永遠にSK-IIに所属する。

肌のお手入れをアドバイス(写真はイメージ、写真/Shutterstock)
肌のお手入れをアドバイス(写真はイメージ、写真/Shutterstock)

 Yumiは、AIを駆使し、人間のように見え、人間のように動くデジタルヒューマンを開発するニュージーランドのスタートアップ、ソウル・マシンズとのコラボレーションの産物だ(実際の様子はオリジナル記事参照)。米グーグルの自然言語処理プラットフォームを基盤に構築されている。Yumiの最大の目的は、「肌の手入れ方法についてSK-IIのファンに助言することだ」とソウル・マシンズCBO(最高ビジネス責任者)のグレッグ・クロス氏は言う。

 「Yumiは肌の手入れの仕方について20代の日本女性に語りかけるように、ターゲット設定されている」。SK-IIは、1日24時間、美容に関する質問に答えるために大勢の人を雇う代わりに、会社のウェブサイト上で常時、世界中の顧客からの質問に同時に答える1人の“AI女性”を世に送り出すのだ。

 ソウル・マシンズはこれまでに、米オートデスクや独ダイムラー、バーレーンのABCバンク、スコットランド銀行などにデジタルヒューマンを制作してきた。こうしたボットはカスタマーサービスを担ったり、どこか皮肉だが人事部門の教育アシスタントとして新入社員を迎え入れたりしてきた。Yumiはカスタマーサービスを提供するだけにとどまらず、SK-IIの「新しい顔」になる。

 米ベライゾン・ワイヤレスはかつて、俳優のポール・マーカレリを起用していたが、悲しいかな、米スプリントがもっと良い条件を提示したため、今ではベライゾンのライバル企業の広告塔になっている。人間は往々にして自分の意見を主張したり、ツイッターで感情を爆発させたり、時に違法行為もはたらいたりする。

世界に先駆け、まず日本でYumiをデビューさせる計画

 ところがYumiのようなデジタルヒューマンはこうした問題は起こさない。生身のブランド大使より安上がりで済む可能性を秘めている。「カスタマーサービスのためにヘルプデスクを使うと、顧客とのやり取り1件当たり平均15ドルかかるが、私に任せてくれれば代わりにYumiを使って1ドルでできる」とソウル・マシンズのクロス氏。

 Yumiは実在の人物をベースにしており、細かく顔をスキャンできる。ただしSK-IIは、Yumiのベースになった女性のことや、支払う報酬の詳細を明かすことを拒んだ。

 外見だけでいえば、Yumiは、有色人種の女性人気という今のファッショントレンドにぴったり合致しているように見える。Instagramのインフルエンサーとして有名な「Lil Miquela(リル・ミケーラ)」やキャメロン・ジェームズ・ウィルソンという名の写真家が制作した「Shudu(シュドゥ)」は、こうしたトレンドの一環だ(SK-IIは米国などの海外市場に投入する前に、まず日本でYumiをデビューさせる計画である)。

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