
インポッシブルバーガーにビヨンドバーガー。植物性たんぱく質で作る人工肉がブームだ。この5月、米ナスダックに上場した関連銘柄は取引初日に高騰。世界最大の食品会社ネスレも米国で参入の準備を進めている。10年以内に世界の食肉市場の10%を占めるとのリポートも発表された。ブームは果たして本物か。
今から3年前。植物由来だが肉のようなパティを使った「ビヨンドバーガー」が、米高級スーパー大手ホールフーズのコロラド州の一店舗の棚に並んだ。翌月には「インポッシブルバーガー」がニューヨーク市内のレストラン、モモフク・ニシのメニューに載った──。
そして現在。人工肉ブームは一気に加速している。最近になってバーガーキングが全米で、このインポッシブルバーガーの販売を開始した。ビヨンドバーガーを手掛けるビヨンド・ミートの株式は、今年のIPO(新規株式公開)銘柄の中で最大の株価上昇率となった(編集部注:5月2日に上場したビヨンド・ミート株はIPO株価25ドルから高騰し、一時は100ドル台を突破した)。
一気に注目が集まる人工肉市場に今、世界最大の食品会社ネスレが本物の肉に似た植物由来バーガーを米国で投入する準備を進めている。
「オーサムバーガー」と呼ばれる新商品がそれ。ネスレの米国法人が2017年に買収した米カリフォルニアの食品会社スイート・アースによって開発されたものだ。スイート社の共同創業者ブライアン・スイーティー氏は、「これは、小さな企業が機敏さを発揮し、研究開発や食品加工、原料調達で莫大な知識を持つ大企業と協力した素晴らしい事例だ」と語る。
スイート社は既に「ベネボレントベーコン」といった、肉に似せていない伝統的なベジーバーガーも生産している。スイーティ氏の妻で共同創業者のもう一人ケリー・スイーティー氏は「ベジーバーガーの次の進化では、肉によく似たバーガーがもっと主流になると考えている」と話している。
インポッシブル・フーズ(インポッシブルバーガーの開発会社)とビヨンド・ミートが手掛ける商品のように、スイート社の新商品は、植物ではなく牛肉のような見かけと味になるよう設計されている。グリルで焼くと、本物の肉のようにジュージューと音を立てる。「かみ応えがすごくいい。とてもジューシーで、色は肉とよく似ていて、料理すると変わっていく」とスイート社のケリー氏は言う。
オーサムバーガーのレシピは牛肉よりもヘルシーだという。例えばタンパク質の含有量は、一般的なビーフバーガーが20グラム程度なのに対し、28グラムにしている。レシピのカギを握る材料の一つが、高タンパクの黄エンドウ豆だ(同社が大豆ではなくエンドウ豆を選んだ背景には、サステナビリティー=持続可能性=の優位性もあった。黄エンドウ豆は成長する過程で土壌を改善する効果があり、地元で調達することもできたからだ)。
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