米国で消費者のケーブルテレビ解約が進む一方、無料で動画を配信する事業者が急増している。その1つが「Tubi(トゥービ)」だ。今後、意外に大きなビジネスチャンスになる可能性がある。

トゥービのウェブサイト(同社サイトより)
トゥービのウェブサイト(同社サイトより)

 ケーブルテレビからインターネット経由のストリーミング(動画配信)サービスに乗り換える「コードカッティング」現象を鼻で笑う人たちが好んで唱えるのは、次のような主張だ。米Netflix(ネットフリックス)や米Hulu(フールー)のようなサービスに支払う費用は本当に積み上がっていき、それこそケーブルテレビを解約してもお金の節約にならないほどだ──。

 この手の懐疑論者は、Tubi(トゥービ)のような無料の動画配信サービスのことをまだ考慮していない。このサービスでは、定額制のサブスクリプション契約なしで何千本もの映画やテレビ番組を視聴できる。トゥービは5年近く前から存在しているが、ケーブルテレビを解約して安価な代替サービスを探す人が増えるとともに急成長を遂げている。同社が先日発表したところによれば、2018年の視聴時間総数は前年比4.3倍に膨らみ、12月単月で17年通年の実績を上回った(同社は具体的な数字を明らかにしなかったが、広告付きの動画配信サービス最大手を自負している)。

 今では業界全体が無料配信に関心を示している。特に、定額サービス事業者が増えてにぎやかになってきたのがその背景になる。19年1月下旬には米メディア大手のバイアコムが広告付き動画事業をてこ入れするため、米Pluto TV(プルートTV)を3億4000万ドルで買収した。同じ1月の半ばには、米国の地方テレビ局を数多く傘下に収めるシンクレアがSTIRR(スター)という無料動画配信サービスを立ち上げている。

 米アマゾン・ドット・コムも自社の「IMDb」ブランドでFreedive(フリーダイブ)というサービスを開始した。米ロクチャンネルは広告付きの動画配信を「Roku」ブランドのスマートTVや他の動画配信サービス事業者のみならず、ウェブブラウザーやモバイルデバイス、韓国のサムスン電子製テレビなどにも広げている。ケーブルテレビ最大手のコムキャストでさえ、既存の有料テレビの加入者だけが対象とはいえ、20年に無料動画配信サービスに乗り出す計画を発表したところだ。

 コードカッティング時代の現実とは、消費者がいくつもの動画配信サービスに加入してお金の節約に失敗するというものではない。消費者が実際にやることは、テレビ番組録画サービス大手のティーボや会計事務所大手のデロイトの調査で推測されたように少数の動画配信サービスに加入し、トゥービのような無料サービスで補完するのだ。

 「私が思うに、誰もがやっと気づいたのは、SVOD(定額制の動画配信)市場が飽和しつつあることだ」。トゥービのファルハド・マッスーディ最高経営責任者(CEO)は、ネットフリックスなどの定額制動画配信サービスについてこう語る。「平均的な世帯向けの市場で多数のSVODサービスが併存できる余地はない。それは(広告付き動画配信が)次の大きなフロンティアであることを意味している」。

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