今回の連載では、米ウーバー・テクノロジーズや米リフトのビジネスモデルを運転手の視点でひも解き、アプリやサービスの改善提案を行った。特に1回目では疑問視される収益性について、自動運転車の導入を想定したシミュレーションを試みた。最終回はこうしたユニコーン企業を日本でも育成する仕組みについて考えたい。

今回は「アイドルエコノミーとユニコーンクラブ」と題して、日本をスタートアップで活性化するための方策についてご紹介する。アイドルエコノミーについては以下で説明するが、ユニコーンクラブは企業情報サイトなどによる評価額が10億ドル以上のスタートアップ企業群のことを指す。
ここで筆者の恩師でもある1人の方を紹介したい。日本が誇る世界の「ミスターストラテジー」こと大前研一ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学学長である。「3Cモデル」など多くのビジネスフレームワークを考案した方だ。
その大前氏は2015年ごろ、シェアリングビジネスのことを「アイドルエコノミー」と表現した。ウーバーやリフトであれば空いている車と運転手、米エアビーアンドビーであれば使っていない部屋、それぞれを一般の利用者に提供することを意味する。米アップワークや米タスクラビットのように、働いていないプロフェッショナルやワーカーに仕事を依頼するといったものもある。
つまりアイドルエコノミーとは、「働いていない」「空いている」「使われていない」、ヒト、モノ、カネなどアイドル(Idle)状態にある遊休(潜在)資産を、スマートフォンのアプリなどを介し、(潜在)顧客に、簡単・安全にサービスを提供できるオンラインのプラットフォームビジネス全般のことを指す。
ちなみに米国商務省はこのようなサービスを提供する新しい企業群のことを「デジタル・マッチング・ファーム」と呼んでいる。
潤沢な資金が提供されるユニコーンクラブ
米クランチベースや米CBインサイツなど、スタートアップの企業情報サイトによると、ユニコーンクラブには世界で約310社の企業が該当する。推定企業価値は合計で約120兆円に達する。実体経済を大きく上回る資金が市場に提供されて、行き場を失い、高いリターンが得られる投資先を探して世界をさまよっている。そうした余剰資金であるホームレスマネーの一部もVC経由でユニコーンに投下され、バーチャルな企業価値がそこまで創出されたということだ。
ちなみにユニコーンの中でも20社が「デカコーン」と呼ばれる、企業価値が100億ドル(約1.1兆円)超えの企業である。
トップは中国のメディアサービス企業のバイトダンスで750億ドルだ。動画アプリの「TikTok」が有名で、ニュースアプリを提供している。2位がウーバーの720億ドル、3位が中国のライドシェア最大手である滴滴出行(ディディチューシン)で560億ドルだ。滴滴はユニコーン入りしてから4年でここまで成長した。
この他、オンラインで食料品などを注文すると、近くのスーパーで買い物し届けてくれる即日配達サービスを提供する米インスタカートもある。最短1時間で届けるサービスもある。同社は2012年に創業し、その後2年半でユニコーン入りし、既に80億ドル以上の市場価値がついている。
ユニコーンが生まれるきっかけは米国で12年に、JOBS Act(Jumpstart Our Business Startups Act)と呼ばれる法案が可決されたこと。証券規制が緩和され、ベンチャー企業が株式を公開しなくても、機関投資家から巨額の資金を継続的に調達できるようになったのだ。ユニコーンが短期間で急成長するための錬金術が誕生した。
こうしたユニコーンの数は急増しており、19年1月現在、米国が151社、中国85社、英国15社、インド14社となっている。
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