前回はライドシェアビジネスで顧客にサービスを提供するドライバーの待遇と改善の必要性について説明した。今回はサービスを提供したり利用したりするうえで欠かせない、スマホアプリについて問題点と改善を提案したい。ドライバーの営業効率を改善し、乗客の満足度向上にもつながる。
ウーバーやリフトがドライバーや乗客に対して提供しているスマホアプリは、β版と言ってよいだろう。ピックアップの場所に行っても乗客がいなかったり、電波の弱いところではアプリがフリーズしたりする。乗客の利便性が下がり、ドライバーの効率も悪くなっている。なぜそれらを直視して対応しないのか不思議である。
外部の企業がサービスを提供しているGPS(全地球測位システム)や地図データ、携帯キャリアの脆弱なカバレッジが根本的な問題かもしれない。ただ最終製品のアプリを、乗客やドライバーなどの利用者に提供しているからには現実を直視し、対処策を考えて実施すべきではないだろうか。
ピックアップ場所に乗客がいない
ドライバーとして最も困るのが、ピックアップ場所に乗客がいないことだ。筆者の感覚では、場所が正しいのにその場にいない、あるいは30秒以内に現れない場合が3回に1回、場所が間違っている場合が5回に1回の割合で発生する。
ドライバーがピックアップ場所に到着すると、アプリのボタンを押すことになっている。そこから、乗客待ちタイマーのカウントダウンが始まる。ピックアップ場所が間違っている可能性もあるので、通常ドライバーは到着する前、あるいは到着して1分もしないうちに乗客へ確認の電話を入れる。
到着から5分が経過すると、ドライバーのアプリに乗客へ電話するか、キャンセルをするための画面が現れる(相乗りの場合は2分)。この時点で、ドライバーが「乗客が出てこない」というボタンを押すと乗客はキャンセル料金の5ドルを支払うことになる。
アプリ上で地図の正確な場所が表示されない場合が多いのが原因だ。
乗客用アプリでピックアップする場所の名称や住所を入れると、待ち合わせ場所のポインターが道路沿いではなく、建物や施設の中心を示していることが多い。例えば、交差点に近いビルでは、乗客もドライバーもどこに行けばいいのか分からない。ポインターが指定した場所が住所と異なる場合もいまだあるのが実態だ。
根本的な原因はグーグルマップなど外部のアプリにあるのだろう。乗客が正しい住所を入力していても、住所内にある通り名を考慮してくれない。ポインターが2つの通りの真ん中を示しているような場合、グーグルマップは乗客が想定していない裏通りに、ドライバーを誘導してしまうことが多い。2回に1回はそうなる。
こうした事態を避けるため、ドライバーはアプリにしたがって走るだけでなく、ピックアップ場所に近づいたら誘導されている通りの名称が正しいかどうか、いちいち確認している。
乗客用アプリではGPSの情報を基にピックアップ場所を自動的に選ぶのが主流であるが、ビルの多い都市部ではGPS衛星からの信号は建物と建物の間で反射して計算間違いを起こす。そして正しい場所を示さなくなる場合が多い。
ウーバーやリフトのエンジニアリングチームは、アプリの利用者であるドライバーや乗客が困っていても、根本的な問題が他社のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)や技術などにある場合、対処策を講じようとしない。ここ最近の「ミレニアムエンジニアリング」の大きな問題を抱えている。
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