前回はウーバー・テクノロジーズやリフトが、乗客やドライバーの行動をビッグデータ分析や可視化でいかに変えてきたかを紹介した。今回はドライバー向けのプロモーションやインセンティブ、ドライバーの対応の改善を中心に説明する。

インセンティブによってドライバーの行動を変えて、需要に供給をマッチさせる。上と下はリフトの例で、中はウーバーの過去の施策。提供条件は変更している可能性もある
インセンティブによってドライバーの行動を変えて、需要に供給をマッチさせる。上と下はリフトの例で、中はウーバーの過去の施策。提供条件は変更している可能性もある

 2016年1月、ウーバーがリフトに対抗するため、料金を大きく引き下げた。この際、ドライバーの取り分が2割以上減ってしまい、不満が爆発したことがあった。最終的にはウーバーが差額分の補償を始めた。1週間当たりのライド数に応じて、ボーナスを支給するというものだ。

 ここでライド数とは顧客の利用回数を指す。相乗りのサービスでは見知らぬ乗客グループが同乗することもある。2つのグループが乗ってきた場合、ドライバーから見たら「1乗車」で「2ライド」となる。

ウーバーに専念させたボーナス

 ウーバーが提示したボーナス支給の条件は1週間に120ライドを達成すると、最高で500ドルのボーナスが出るというものだ。毎日働いても1日17ライド以上をこなす必要がある。週5日だと24ライドとなる。つまり時間的にウーバーのドライバーに専念しないとクリアできない。

 こうしてウーバー専門の運転手が急に増えて、囲い込みの手法として大成功したことがあった。リフトもあわてて同様のボーナスを始めたが、いったんウーバーに移ったドライバーはなかなか戻ってこなかった(その後、ウーバーの一連のスキャンダルが起こり、ドライバーや顧客がリフトに流れた)。

 もっとも米国でも人手不足となっており、フルタイムのドライバーを確保する手法としては優れた戦略であると言える。そのため今でも試行錯誤を繰り返しながら続いている。

 ボーナスは週末や夜間だけ仕事をするドライバーにとってはメリットがない。むしろウーバーとリフトの顧客を同時に待ち受けた方が効率を上げられる。ウーバーとリフトの両方のステッカーを貼ったクルマが多いのを空港などで見かけた方もおられるだろう。

両社のステッカーを貼ったクルマ
両社のステッカーを貼ったクルマ

 リフトは金曜の深夜や週末などに特定の時間帯を設けて、そこで3~5ライドで、10~15ドルのミニボーナスを支払うという少額のインセンティブ施策を実施している。

 ドライバーの囲い込み戦略としては以下の3つが考えられる。

(1)自社と競合の両方のドライバーをやっている人を自社専用に取り込む
(2)新規のドライバーを他社より先に青田刈りする
(3)競合他社のみで働くドライバーを自社へ奪い取る

 といった手法が考えられるが、ウーバーのボーナスは(1)の成功事例だ。

 (2)は両社ともに自社と契約するドライバーを通した紹介(リファーラル)プログラムで、紹介者と新規ドライバーの両方にボーナスを支給している。

 (3)に関してはドライバーの立場で考えればいくつかの名案は浮かんでくるはずだ。次回以降の「提言編」でも紹介するが、時間当たりのライド数が増える施策を導入することだ。これによってドライバーの時給が高くなる。

 例えば、空港近くでの待ち時間を減らす配車アルゴリズムの導入といったものだ。アプリを改善し、ピックアップ場所を間違ったり、走行中に画面がフリーズしたりしないようにする必要もあるだろう。

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