ウーバーやリフトは「移動」の概念を大きく変えた一方でビジネスモデルの詳細やデータの活用方法は明らかになっていない。シリコンバレー在住の日本人ドライバーによる連載の2回目は、タクシーに対する優位性を支えるライドシェアにおける相互評価や料金選択の幅について解説する。
第1回はライドシェアの代表格とも言えるウーバーテクノロジーズの限られた損益情報から将来的な黒字化のシナリオをひもといた。そこからライドシェアビジネスの将来性と問題点や課題を知っていただけたのではないだろうか。2回から4回は、そのビジネスモデルについて読み解いていく。
調査会社の米サーティファイによれば2018年の第2四半期で米国の車での陸上移動手段はウーバーが48%、リフトが25%だ。レンタカーが22%で、タクシーはわずかに5%になってしまった。実に利用者の2人に1人がウーバー、4人に1人がリフトを利用している。過去4年間でライドシェアの利用率は10倍となり、レンタカーは4割減、タクシーに至っては7分の1にまでなってしまった。
ウーバーやリフトはなぜここまで伸張することができたのか。今回は筆者がビジネスモデルで一番重要であると考える「バリュープロポジション」を紹介する。
バリュープロポジションとは3Cモデル(顧客・自社・競合)をベースに顧客の視点でそのサービスや製品に高い価値があり、競合に対しても大きな優位性をもたらす価値のことである。
ライドシェアビジネスが米国で急成長している背景に、顧客である乗客にとって、従来型のタクシー産業が提供してきたサービスに対する圧倒的な優位性があるからと言える。牛丼ではないが「安い、速い、うまい」サービスを提供している。

例えば、スマホで呼び出してから迎えに来てくれるまでの時間や、目的地に到着してから精算が終了するまでの時間がタクシーに比べて圧倒的に短縮されている。ただ、料金については現時点では赤字を出しながら低く設定している面がある。投資家などから有り余る資金を提供されており、キャッシュフローを気にせず市場のシェア拡大を最優先に低料金で乗客をタクシー産業や競合他社から奪うことに専念しているわけだ。
サービスに対する評価も高い。車両は比較的新しく清潔で、運転手もフレンドリーだ。短距離だからといって、乗車拒否されることも少ない。こうしたサービス品質を高め、維持するために必須なのが独自の評価システムだ。
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