スマホやウエアラブル端末で取得するデータを使い、現代社会に広がるストレスの課題を解決しようとしているのは、従業員のストレス診断サービスを手掛けるラフール(東京・中央)だ。日々の職場の音声や顔の表情の変化を読み取るなど、データ連携の幅を拡大することで精度を高める。
厚生労働省の調査によると、2017年度の精神障害の労災補償の請求件数は1732件で、5年前の約1.4倍。メンタルヘルスの問題は深刻化している。ラフールはストレスチェックに関するコンサルや研修事業を手掛ける11年創業のスタートアップ。導入企業は約3000社、利用者が20万人。18年9月には、あいおいニッセイ同和損害保険と組み、労災請求の補償を対象にした保険とセットにした研修を開始したことでも話題になった。
既存のチェックでは対策できず
15年からは労働安全衛生法によって、従業員50人以上の事業所にストレスチェックが義務付けられた。このテストで従業員が負担をどれだけ感じているかを把握できるようになったものの、課題はまだ残る。「チェックしただけでは、対策にはならず意味を成さない」とラフール社長の結城啓太氏は判断する。
義務付けられたストレスチェックには57項目の質問があるが「今自分がどう感じていますかと聞く質問が中心で、なぜそう思ったのかという外部要因を詳しく聞く項目がない」(結城氏)からだ。高いストレスを感じている従業員は産業医と面談するが、原因が分からなければ産業医も対処が難しいというわけだ。
個人の性格、会社や職場に対する評価、役職や職種の違い、会社の施設などラフールは原因の切り分けをするため、自社の顧問でもある精神保健指定医の監修を受けながら追加の約90項目の質問を作り上げた。
18年8月からは、独自のストレスチェックが受けられるアプリと組み合わせ、高ストレスという判定が出たときには医師面接や電話相談、提携病院での磁気刺激治療が受けられるサービスパックの提供を始めた。企業向けに1人当たり月額300円(税別)で提供している。
通常アンケートは年に1回か、半年に1回のペースで実施するが、今後パックのユーザーには10~20問程度の簡易アンケートを毎月実施できるようにすることも検討している。
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