高級車メーカーの伊アルファロメオが実践した「意味のイノベーション」と呼ぶ手法が注目されている。商品や企業が持つ従来の意味を見直し、新たな意味を作り出すことで競合との低価格競争に陥らず、新しい市場の開拓に結び付ける。多額の技術投資による差異化ではないため中堅中小企業も活用できそうだ。

アルファロメオは、いかにもイタリアンな官能的スタイリングを特徴とする自動車メーカーである。同社が得意とする高級車は、一般には「自分の経済力を誇示したい裕福な人に向けた商品」という捉えられ方をする。
だがアルファロメオは2013年発売の「アルファロメオ 4C」というスポーツカーを開発する際に、そうした“固定観念”を見直した。4Cを購入する人を、「裕福かどうかではなく、クルマをキビキビと運転したい人」とし、4Cは「運転することに、あふれんばかりの情熱を持つ人に向けたクルマだ」と定義した。
パワーの割に軽量なキビキビしたスポーツカー
こうした見直しを経て完成した4Cは、他のアルファロメオ車に比べればエンジン出力(馬力)は低く、価格も高くない。だが、ボディーに軽量なカーボンファイバー(炭素繊維)を使用することで、パワーの割に軽量な車体に仕上がり、スポーツカーらしく運転することにこだわる人から熱い支持を得た。売れ行きも好調で、人気車の仲間入りをしている。
この4Cの車両開発において、アルファロメオが実践した手法は、「意味のイノベーション」と呼ばれるものだ。イタリアのミラノ工科大学教授であるロベルト・ベルガンティ氏が著書『デザイン・ドリブン・イノベーション』で提唱し、注目された。
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