通信業界では、多彩な企業との協業で5Gの用途を開拓しようとする動きが活性化している。「CEATEC JAPAN 2018」ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの担当者が5Gサービスの展望を議論した。特集の5回目は、その様子を紹介する。人口カバー率より社会課題の解決を優先するなど従来との違いも見えてきた。

CEATEC最終日となる10月19日、満員となった幕張メッセ(千葉市)の講演会場に国内大手携帯電話事業者3社と総務省の担当者が登壇した。5Gの共創ビジネスというテーマで、各社がそれぞれの取り組みを紹介。続いて5Gのサービス展開を議論するパネルディスカッションを開いた。ここでは後半のパネルディスカッションの様子を紹介していく。
3月までに5Gの電波割り当て
最初の議題は「4Gと5Gは何が違うのか」。日本政府が実現を目指す超スマート社会「ソサエティー5.0」の基盤になるという考え方を示したのは、総務省総合通信基盤局電波部電波政策課長の布施田英生氏だ。「生活を便利にして、産業構造を変える。そんな未来の社会の基盤を支えるのが5G」(布施田氏)と述べた。そのための総務省の役割として「2019年3月までに政府として5G向けの電波割り当てを進める」という。
通信業界にとって20年に一度の大変革になるという考え方を示したのはNTTドコモだ。携帯電話が登場し普及していった1980年から2000年、iモードに始まりスマホによるデータ通信を扱うようになった00年から現在まで。そして20年以降は「5Gが次の20年を作る」(NTTドコモR&Dイノベーション本部長の中村寛氏)。5G時代には、スマホの技術が周囲のデバイスに広がることで「パブリックビューイングなど新しい感動を生み出す」(中村氏)と個人向けサービスが広がるほか、業務向けでも多彩な産業をつなぐために5Gが利用されるという。
4Gとの違いは分かりづらいようにも感じるが、5Gを使うことでサービスの質が高まり「後から振り返ると大きな変化になったと実感できるようになる」(KDDI技術統括本部新技術企画担当理事の宇佐見正士氏)という。例えば、ドローンの監視サービス。現在の4Gでもドローンの映像を送信できるが、5Gを使えばより高画質の映像を転送できる。そのため、ドローンを監視や防犯に使うときに、AIが映像に映っている不審な人の行動を認識する精度は飛躍的に高まる。
4Gまでの移動体通信は、主に人と人をつなぐために使われてきたが、「5Gではモノとモノ、モノとヒトとの通信も広がる」(ソフトバンク テクノロジーユニットモバイル技術統括モバイルネットワーク本部長の野田真氏)。町中にあるカメラやセンサーからの情報を集め、AIが分析し、導き出した情報を集約して人に伝える。「5GとIoTはセットで使われる」(野田氏)という考えが広がっている。

社会課題重視でエリア拡大
次に投げかけられた問いは「通信エリアはどう広がるか」。通信事業者が新しい通信方式の基地局やアンテナを設置するには、膨大な投資が必要となる。サービス開始当初は十分な5Gの通信エリアを全国に広げることは難しいと考えられる。現時点では「必要とされるところにエリアを作っていく」(NTTドコモの中村氏)、「なるべく早く全国津々浦々に整備したい」(KDDIの宇佐見氏)と述べるにとどめた。
4Gが開始となったときには、各通信事業者が人口密集地域の都市部で競うように基地局の整備を進めた。5Gでは、通信事業者はそんな激しいエリア獲得競争は想定していないことをにおわせた。「5Gは社会課題の解決のため、本当に必要なところで使うというのが大きな方向性」(NTTドコモの中村氏)として、必ずしも人口密集地域での面展開を優先するわけではないという考えを示した。例えば、山間の過疎地でお年寄りを送り迎えするための遠隔操縦バスが必要となれば、そうした場所にも5Gの基地局を整備する可能性があるということだ。
最後の話題は「業務用途で5Gの料金はどうなるか」。IoTなど業務向けの利用を拡大するとなれば、個人向けと同程度の月額料金ではコスト面で見合わない可能性がある。企業との協業を進めるうえでは「料金は柔軟性を持たせる」(ソフトバンクの野田氏)という声の他、「モバイルエッジコンピューティングを活用すれば通信量は減らせるかもしれない」(KDDIの宇佐見氏)と全体の付加価値を高める提案をしていく意向を示した。
※次回は11月5日に公開予定