通信と同じことが交通でも起こる

 MaaSは交通サービスの変革にとどまらず、他の領域のビジネスにも大きく影響を及ぼす。特にレベル3以上になり、サブスクリプションモデルが普及すると、それは顕著になる。参考になるのが通信の世界で起きたことだ。「40代以上の人は覚えていると思うが、インターネットも昔は従量制だった。だが、定額制になり、今では高速かつ安価で利用でき、無料で使えることもある。結果、何が起こったかと言えば、Googleで検索したり、Amazonで物を買ったり、Facebookで動画を共有したりすることを今では全く抵抗なく行うようになるなど、通信インフラの上でさまざまなビジネスが成り立つようになった」(日高氏)。

MaaS Tech Japan社長の日高洋祐氏。今年、鉄道会社を離れてMaaS Tech Japanを立ち上げ、MaaSプラットフォーム事業などを行う
MaaS Tech Japan社長の日高洋祐氏。今年、鉄道会社を離れてMaaS Tech Japanを立ち上げ、MaaSプラットフォーム事業などを行う

 MaaSで移動コストが定額制になれば、同じように新しい産業が生まれると日高氏は言う。例えば、不動産で言えば、MaaSの定額制パッケージ付きの賃貸住宅。マイカーや駐車場要らずで移動の便利さが保証されている物件であれば、他と差別化できる。これは既に米サンフランシスコで実践されている。あるいは、医療分野では病院を予約するとMaaSパッケージが付き、送迎予約もでき、しかも無料というサービスもあり得るだろう。MaaSの移動データを活用し、積極的に外出して健康になっている傾向が確認された高齢者は、医療保険の掛け金を下げるような健康増進型保険なども考えられる。「MaaSは別のサービスと組み合わせやすい。さらに、駅から遠いと価値がない、近いと価値があるという既成概念が崩される。移動の最適化がなされることで、不動産、医療だけでなく、働き方改革関連、介護や保育関連の産業も伸びてくるだろう」(日高氏)

 一方、地方の課題解決も視野に入る。「地方に行くと分かるが、同じエリアで商業施設の送迎のクルマ、福祉やデイサービスのクルマが数多く行き交い、その中に公共交通も独立して運行し、無駄が多い。MaaSを使って効率化できれば、将来的に地方でも最適化された移動手段を確保できるようになる」(牧村氏)。

 直近では観光とMaaSの組み合わせが有望という。「海外では、ホテルを予約すると空港からの移動もワンクリックで予約できるサービスが普及している。日本は大都市を中心に交通機関が発達しており、急増する外国人旅行客向けに観光分野をメインに力を注ぐことが日本版MaaSの試金石になると思っている」(牧村氏)

 12月初めには産官学でMaaSを普及促進する団体「JCoMaaS(ジェイコマース)」が発足し、舞台は整った。今、世界で開発競争が繰り広げられている自動運転車も移動するためのツールの1つであり、MaaSに組み込んでこそ、人にとっての価値が高まる。将来は世界で1兆ドル(約113兆円)に拡大するといわれるMaaS市場。19年はさまざまな産業でビジネス化の動きが加速しそうだ。

(写真/辺見真也)

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