LINE Pay、Origami、PayPayのQRコード決済3社のキーパーソンが、「日経クロストレンド EXPO 2018」内のパネルディスカッション「キャッシュレス社会到来を加速するQRコード決済の今」に登壇。QRコード決済への期待や、決済から広がるサービスについて意見を交わした。

まず登壇した3社から、自社のサービスについてのミニプレゼンがあった。LINE Pay取締役COOの長福久弘氏は「LINE Payは、LINEのユーザーならばチャージすることで簡単に決済や送金ができるサービス。LINEのコミュニケーションの延長線上にお金の支払いができるようになる。例えば『昨日の飲み会代金を割り勘で半分払って!』というようなときに手軽に支払いができる。店舗側としても、決済からLINEの友達登録をしてもらえばクーポンの提供や新メニューの告知などにつなげられる」とアピールした。

Origami 事業開発ディレクターの伏見慎剛氏は、「QRコード決済のOrigami Payを2015年から提供しており、加盟店も着実に増えている。Origamiがマンションの一室で創業した12年には、キャッシュレスもFinTechも国内では耳なじみがなかった。しかし今後はスマートフォンだけで決済まで完結する時代が来るだろう。ローカル、グローバル、オープンの3つを重視して、多くの人がスマートフォンでお金を払える環境を提供していきたい」とQRコード決済としては長い歴史を持つ同社の視点からプレゼンした。
18年10月5日にサービスを開始したばかりなのがソフトバンクとヤフーの共同出資会社PayPayの「PayPay」だ。同社で代表取締役社長執行役員 CEOを務める中山一郎氏は、「まだサービスが産声を上げたばかりで、11月にマーケティング施策を発表したところ。QRコード決済は使えば便利なことを分かってもらえるので、使うきっかけをつくりたい。12月からはキャンペーンで利用金額の20%が戻る『100億円あげちゃうキャンペーン』を実施して知名度を高める。一方で全国に20拠点を設け加盟店への直接営業も推進している」と現状を説明した。
キャンペーンは認知度向上に重要
QRコード決済は、国内ではまだ広く普及している段階には至っていない。これからのQRコード決済の普及にはどのような施策が必要だろうか。PayPayの中山氏は「後発のサービスなので、12月に開始するキャンペーンによる知名度向上に期待している。ユーザーや加盟店に響くように、準備を進めている段階」と説明した(編注:キャンペーンは18年12月4日に開始。大きな反響から12月13日には100億円の還元額に達し、10日目で終了した)。
Origamiの伏見氏も、キャンペーンは認知度を高めるために重要な施策だという点で共通する。「ローソンのコーヒー無料、吉野家の牛丼半額などのキャンペーンは反響が高い。認知度をまずは高めていくためにOrigamiがキャンペーンを提供する視点だ」という。一方で、違う視点もある。「美容室などでは来店客のうちOrigami Payの決済シェアが40%を超えるような店舗も出てきている。顧客との接点が増えて、リピートにつながっているのだ。加盟店が原資を出してキャンペーンを打ち、顧客のリピートにつなげられるような、継続性を持ったキャンペーンを実施する動きも出始めている」。

LINE Payの長福氏は、「一般の人はQRコード決済を使おうと考えることすら少ないだろう。でも実際に使ってみるとその利便性を実感する。利用者のリピート率は高く、特に送金のリピート率は驚異的だ。使ってみて簡単、便利を体感してもらうという視点からキャンペーンを実施してきた」とキャンペーンによる認知度向上がリピート利用につながっていることを改めて語った。
キャンペーン以外の施策についても各社からコメントがあった。LINE Payの長福氏は、「LINE Payでは決済後にどのユーザーが決済したかが分かり、ビジネス向けLINEアカウントのLINE@のお勧め機能を使えばユーザーに再アプローチができる。決済そのものがリピート施策になる点が重要」とソーシャルメディアとの連携が強みになることをアピールする。Origamiの伏見氏は、「OrigamiにもOrigami Connectと呼ぶ機能があり、リワードを送ったり『ご無沙汰ですね』といった来店促進の連絡をしたりといったコミュニケーションが取れる。若い人を中心に飲食店や美容室の予約でも電話するのが面倒な人が増えており、決済から次回の予約につなげるようなネット化の推進が不便の解消につながりそうだ」と指摘する。PayPayの中山氏は、「親会社のYahoo! JAPANの顧客基盤を使って利用者を増やすことを考えている」と語る。
導入コストが低いQRコード決済
今後の普及について、各社はどう見ているか。「実現したいのはキャッシュレス、ウオレット(財布)レスの世界。LINE Payでは物理的なカードを使うLINE Pay、QUICPayと提携した非接触決済も提供していて、QRも1つの方式。その中でQRには注力しているが、自分にあった決済手段を見つけてもらえるといい」(LINE Payの長福氏)。Origamiの伏見氏は、「最初はBluetoothを使った決済の仕組みを導入したが、QRコードははるかに加盟店の導入コストが低廉で、一気に普及した」と、加盟店のコスト負担の低さによる広がりを示唆する。PayPayの中山氏は、「まだ将来のことを語れる段階ではなく、目の前のユーザーやストアのみなさんに使ってもらえることに注力していきたい」とサービスの広がりに期待を寄せる。

一方で、今後もQRコード決済サービスのユーザー拡大や、事業者の参入が続くかというと疑問もあるようだ。LINE Payの長福氏は、「中国でも既にアリペイとウィーチャットペイの2サービスに絞られてきている。日本では現状はまだ多くのサービスがあるが、最終的には数社になるのではないか。そうした中で、コミュニケーションサービスと連携してお金が動くLINE Payは使ってもらいやすいと考えている」と語る。
Origamiの伏見氏は「支払いの個別の手法の提供から、クレジットカードのような支払いのプラットフォームの提供へと変化を目指している。20年にはスマホ決済、QRコード決済かもしれないが、25年はQRコード決済が主流かどうか分からないし、そもそも決済手段がスマホかすら分からない。顔認証で決済するような世界であっても、対応していきたい」と意気込む。PayPayの中山氏も、「今はQRコードが便利だとして提供しているが、今後は時代の要望に合わせて便利な方法を採用していくことになるだろう」と語る。登壇した各事業者ともに、便利な決済とそこから広がる豊かな生活の提案による事業展開を思考している。その中で、QRコードも現在の最適解の1つと捉えながら、今後の異なる決済手段への対応も見極めていこうとしているようだった。
(写真/新関雅士)