ネットの巨人たちが特大ビルになって出現

『シュガー・ラッシュ:オンライン』のプロデューサーを務めたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのクラーク・スペンサー氏
『シュガー・ラッシュ:オンライン』のプロデューサーを務めたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのクラーク・スペンサー氏

 インターネットのWebサイト数は15億を超えると言われる中、本作では主要サイトを巨大ビルに見立て、金融街やショッピング街、SNS街などに分けて配置し、仮想の大都市を作り出している。そこには、AmazonやGoogle、Facebookだけでなく日本のLINE、楽天などの特大ビルもあり、いかにもありそうな空想上の街並みを巧みに表現している。こうした1つ1つのグローバル企業を劇中に登場させるには、許諾のための交渉が不可欠であり、スペンサー氏のプロデューサーとしての敏腕ぶりが発揮されたことは想像に難くない。

 そして、街では仮想の世界に住む人たちも、せわしなく動き回っている。それらは、“ネットユーザーのアバターたち”と“ネット住民”の2種類のグループに分けて設定。つまり、現実世界のユーザーがパソコン、スマホから要求する「検索」や「購入」といった行為を仮想世界ではアバターが代わりに行い、ネット住人はそうした行為を手助けする構図だ。その役割分担をスペンサー氏は、「例えば、ユーザーが食べログやTripAdvisorで“タコスレストラン”を検索した場合、ネット住人たちが該当しそうな店の情報を次々と持ち寄り、その中からアバターが最適な店を選ぶようなイメージ」と、説明する。一例として、実際の作品内では、オークションサイトのeBayのビル内で、ネット住人が出品物をあちこちで競りにかけ、アバターたちが応札するユーモラスな世界観を描写。ラルフとヴァネロペもeBayの競りに他のアバターと共に参加し、目的のハンドルに入札する場面が描かれている。

 注目すべき点はまだある。それは、ヴァネロペが迷い込んだディズニーキャラクターが集まるサイト「Oh! My Disney」の建物でのシーン。アイアンマンや、『トイ・ストーリー』のバズ・ライトイヤーなどが登場する中、ヴァネロペが『スター・ウォーズ』のストームトルーパーに見つかり、追われて逃げ込んだ立ち入り禁止の部屋には、歴代のディズニープリンセスたちが集結。「このシーンのすごいところは、過去の映画でプリンセスの声を担当した同じ声優が、ここでも演じていること」と、スペンサー氏は秘話を披露する。こうした豪華な共演が実現できるのは、実写からアニメまで、有力なコンテンツとキャラクターを一手に抱えるディズニーならではの力技だろう。

 監督は『ズートピア』でオスカーを受賞したリッチ・ムーア氏で、同作品で脚本を担当したフィル・ジョンストン氏が本作でも脚本を手掛ける。加えて、『アナと雪の女王』で共同監督と脚本を担ったジェニファー・リー氏、『ベイマックス』の共同監督クリス・ウィリアムズ氏も参画。「過去10年でディズニーに最も成功をもたらしている制作陣」と、スペンサー氏は胸を張る。また、携わったクリエイターなどの数は日本を含む世界25カ国以上、800人以上に及ぶという。およそ30年前の1989年、日本企業の経営を研究する一環で自動車工場の組み立てラインで働いた経験を持つスペンサー氏は、「各自が完成車への貢献を誇りに思い、集団の努力で達成することを栄誉とする仕事の姿勢を学んだ」とし、今回もクリエイターが一丸となり、努力と情熱を持って作り上げたことが重要と話す。日本的な集団の力を生かす体制をベースに、まさにディズニーが総力を結集して作り上げた『シュガー・ラッシュ:オンライン』。年末年始の映画興行の台風の目になりそうだ。

(写真/新関雅士)