マツダの革新をデザインで引っ張ってきた同社常務執行役員デザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏。伝統と革新、合理性と無駄…。デザインとは、時として相反する命題に向かい合い、1つの「形」にまとめ上げる宿命を持つ。前田氏だけが語り得るデザイン論。テーマは「相克」。

前田育男氏 マツダ 常務執行役員 デザイン・ブランドスタイル担当
前田育男氏 マツダ 常務執行役員 デザイン・ブランドスタイル担当
(撮影:栗原克己)

 マツダの快進撃をデザインで引っ張ってきた人物、前田育男。

 2009年にデザイン部門のトップに立つと、デザインテーマ「魂動(こどう)」を打ち出し、常務執行役員となった今に至るまで先頭を走り続けてきた。その革新者が語る、現場発の「デザイン論」。

 初回故の前口上だったはずなのに「足し算と引き算」「人為と偶然」といったテーマで白熱した前回に続き、今回も往年の名車の話から「普遍美と時代性」「企業風土と地域文化」と、議論はさらに深化し、盛り上がりを見せていきます。

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前田は、大学生から今に至るまでモータースポーツを趣味にしている筋金入りの「車好き」だよね。個人的に好きな車って何? マツダ以外で(笑)。

前田 今乗っているのは別の車だけど、好きなのは、ジャガー・Eタイプ(1961年から1975年の間に製造されたスポーツカー。特に初期モデルは、スタイリングの美しさが高く評価される)や、アルファロメオ ジュリアTZ2(1965年に12台のみ生産されたレーシングスポーツカー)。総じて1960年代前後の車になるね。

いわゆる車好きの人たちに聞くと「60年代の車が最高」って答えが返ってくることが多いよね。

前田 確かに、そう言う人が多い印象はある。カーデザイナーとして一番悩ましいのは、あの時代の車を超えられないこと。自分だけじゃなくて、今のカーデザイナーはおしなべてあの時代の人たちを超えられていないんじゃないか。そう感じているからこそ、現代のテクノロジーを搭載した上で「ぬくもり」のあるデザインの車をどうしても作り出したいって思う。当時の車は、職人がフリーハンドで鉄板をたたき出したりしているから、左右非対称だったりもする。前にも言ったけれど、そんな「ゆるい」フォルムの質感を完璧に再現したいと思っている。

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