三重県四日市市にある中村製作所は、金属の切削を得意とする精密加工メーカーだ。創業約100年で、金属であれば誤差1000分の1mm以下を保証する技術を持つ。だが、リーマンショックで売り上げは9割減まで落ち込んでしまった。その危機を4代目社長はどう乗り越えたのか。
中村製作所は現在、工作機械や医療用機器からロケットまで、幅広い分野の部品を手掛けている。「空気以外はなんでも削ります」がモットーだ。この技術を応用し、2018年4月に発売したのが、無水鍋「MOLATURA bestpot(モラトゥーラ ベストポット)」。同じ四日市の地場産業である萬古焼の土鍋と鉄製の蓋の双方を、技術を生かして精密に切削することで隙間なく密着させることができる。蓋の重さだけで完全に密封し、素材の水分を逃がさず、その水分だけで加熱調理ができる。現在、納品まで2カ月待ちという人気商品になっている。18年度グッドデザイン賞を受賞した。
1社取引の下請けの弱点が露呈
「削る」という共通点があるとはいえ、なぜ機械部品を削っていた会社が一般消費者向けの商品開発に乗り出したのか。現在の社長の山添卓也氏は創業者から4代目。01年の24歳のときに父である先代社長が病で他界し、会社を継ぐことになった。ところが、その7年後にリーマンショックが起きる。取引先は1社に集中していたが、その工作機械メーカーが部品を内製化するとして大部分の発注を引き上げ、残った注文にも20%のコストダウンを求められた。売り上げは9割減まで落ち込んだ。
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