※日経トレンディ 2018年12月号の記事を再構成
日経トレンディが選んだ「2019年ヒット予測」の2位は「新元号フィーバー」。2019年5月1日、慣れ親しんだ「平成」から「新元号」に変わる。実に202年ぶりの“予定された”新天皇即位。これが、日本の消費を揺り動かす。
新元号で列島が沸く!
政府は新天皇即位日の5月1日を「来年限りの休日」にすることを発表した。10連休のGWという超ロング休暇が出現した。まず動いたのは旅行だ。旅行予約サイトのエアトリによると、10連休化が発表された10月12日以降、海外旅行の予約件数は前年同期比766%に急上昇。JTBでも、海外旅行予約が前年比2倍に達した。
国内旅行も活発になる。天皇陛下の退位・新天皇の即位前後は、特別な皇室行事が目白押しで、日本の古い文化に関心が集まる。4月初頭に新元号が発表されれば、その由来や過去の元号にも興味が湧き、がぜん歴史通になる日本人が続出。こうした影響で「日本の伝統を感じる所を旅行したいという機運が高まる」と、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は予測する。
折しも奈良では、301年ぶりに興福寺中金堂が再建された。京都では、JR「そうだ 京都、行こう。」のCMを25年間続けた長塚京三が今年ラストを迎え、キャンペーンが刷新されそうだ。主要な博物館や美術館では、皇室にゆかりのある宝物を見られる機会が増える。
そうして迎えるクライマックスが10月22日だ。新天皇の「即位礼正殿の儀」が執り行われ、この日も来年限りの休日となる。新天皇皇后両陛下は皇居内での儀式のあと、赤坂御所に向かってパレードを行う。かつて「週刊女性」で皇室を担当し、後に皇太子妃となる小和田雅子さんの存在をスクープしたセブン&アイ出版の沢田浩氏は、「前回の即位礼にはオープンカーに乗った新天皇皇后両陛下の姿をひと目見ようと、12万人がパレードに集まり祝賀ムードにあふれた」と振り返る。今度も同様に人が押し寄せるのは確実だ。
それと同時にやって来るのが、増税だ。慶事と共に、高額商品のまとめ買いに前向きになる人が多くなり、「元年婚を目がけて背中を押されるカップルも増える」(熊野氏)。
一方、「平成を懐かしむ気持ちも高まる」と熊野氏は言う。「今、多くのトレンドに、事前には静かなのに、事が始まってから乗り遅れまいと尻上がりに盛り上がる『バンドワゴン効果』が見られる。新元号になってから、平成のものを買ったり思い出したりするリバイバルが起きるだろう」。
水面下では、企業が平成リバイバルを仕掛けようとしている。1990年代を象徴する「ジュリアナ東京」は、大阪で装い新たに開業。バブルを彷彿させるクルマも復活。エンタメではDREAMS COME TRUEが30周年を迎え、「たまごっち」や「ゲームボーイ」など懐かしい国民的玩具も、形を変えて復活する兆しがある。
新時代を尊び、古式ゆかしい日本に思いをはせ、自分の青春を思い出す。停滞していた日本に、「すごい」「懐かしい」「行きたい」と感情を揺り動かす“フック”が次々に生まれる。
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