※日経トレンディ 2018年12月号の記事を再構成

日経トレンディが選んだ「2019年ヒット予測」の1位に輝いたのは「デカトロン&ワークマンプラス」。フランスと日本、発祥地は異なるが、激安&高機能と方向性を同じくする2つのブランドがアパレル業界に4000億円もの新市場を生み出す。

 次々と日本から撤退する外資ファストファッション。不況一色にも見える国内アパレル業界で今、新たな胎動が始まっている。潜在規模にして4000億円とも試算される新市場を生み出すのは、くしくも2つの方向から同じ市場に攻め込む2社だ。

 2018年9月末。東京・立川市の「ららぽーと立川立飛」に、新しいカジュアルウエアブランド「ワークマンプラス」の1号店がオープンした。運営企業はワークマン。建設現場などに向けた作業服専門店として覇権を握る同社による初の「一般向け業態」だ。

 畑違いの挑戦に見えるが、成功はほぼ約束されている。最大の武器はコストパフォーマンスだ。例えば2900円(税込み。以下同)のブルゾンは、130%伸縮するストレッチ性と防風性を併せ持ちながら約500gの軽量。耐摩耗性の高いコーデュラ繊維を使う防寒ジャケットも同じ2900円だ。ファストファッションに劣らぬ低価格で、驚きの高機能ウエアが並ぶ。ワークマンは「2倍以上高いアウトドアブランドと同等の品質」と胸を張る。

 コスパの秘密は生産数量だ。作業服は過酷な環境で酷使されて消耗が早いため、客は2着、3着のまとめ買いが当たり前。求められる機能性は似ていても、アウトドアウエアとは販売量に多大な差がある。「当社に5万着未満の商品は基本的にない」(ワークマン)。その物量が価格に効いてくる。

 同社が一般向け業態に踏み出したきっかけは、作業服がいつの間にか一般の人々にも売れていたことだった。例えば、雨中での作業のための防水アウターがバイク乗りに売れ、厨房でも滑りにくい靴は幼子を抱える母親や妊婦に愛用されていた。気軽に入りにくそうな店構えなのに、一般客が2〜3割に達する店も現れていた。

 ここ数年、欧州発のデザイン作業着のトレンドが日本にも波及し、街着としても通用する商品が増えていたことも大きい。これを見た同社が、一般向けブランドを立ち上げたのが2年前。その一般向け商品だけを集めた業態がワークマンプラスだ。

 折しも世間では機能性を重視し、アウトドアブランドやスポーツブランドを街着として愛用する人が増えつつある。このトレンドに「価格破壊」が加われば、インパクトは絶大。実際、ワークマンプラスの1号店は絶好調だ。

 異業種発で嵐を起こしつつあるワークマンだが、実は19年春、彼らが強烈にライバル視する“黒船”が上陸する。フランス生まれで、世界に1500店を展開するスポーツ用品店「デカトロン」。純粋な小売り業態として創業したが、今や扱う商品の大半が自社製品で、その売り上げ規模は世界で120億ユーロ以上。事実上、「世界最大のスポーツ用品メーカー」だ。1号店は阪急西宮ガーデンズ(兵庫県西宮市)に出店することが発表されている。

 デカトロンの強みもコスパだ。ひっそりと日本でも営業を始めているECサイトでは、ハイキング用の耐摩耗性の高いバックパック(350円)や初級者向けの硬式テニスラケット(990円)など、極端な安さの商品が目白押し。グローバルでの生産量が圧倒的なのに加えて、「宣伝にお金をかけない」(デカトロンジャパン)方針を徹底していることが大きいという。同社は「あくまでうちはスポーツ用品店」と強調するが、例えば防水性と通気性、耐久性に優れた「セーリングウォータープルーフジャケット」(4290円)など、タウンユースに向きそうな高コスパ商品は豊富にある。

 デカトロンの標準的な店舗は、コストコのような超大型店。西宮市の1号店も大規模店になる見込みで、大量に並ぶ高コスパ商品に関西の客が圧倒される可能性は高い。また「東京圏でも土地を探している最中」との噂もある。

 デカトロンを唯一の競合と見るワークマンプラスは、春までに数十店を出して迎え撃つ体制だ。さらに、すでに850店ある既存のワークマン店舗でも、一般向けの商品売り場を広げ、店を一新していくという。ワークマンの商品が、ユニクロ並みに身近なイメージを獲得する展開も十分にあり得る。

 若年層を中心に、服にお金をかけたくない風潮は年々広がっている。そんな時代に「高機能&激安」が最大の付加価値となり、全く新しい新市場を生み出す可能性は高い。

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