※日経トレンディ 2018年11月号の記事を再構成
東京の新行列グルメを読み解く特集の第3回は、商業施設以外の店舗に迫る。一大旋風を巻き起こしているのが、タピオカミルクティーなどの台湾茶だ。数々のチェーンが台湾から上陸し、ほぼすべてが大行列店に育った。渋谷の夜を彩るのは芸術品のようなパフェ。特別な食体験がリピーターを呼び込んでいる。

9月12日、丸ビルの地下1階に出店したのは、タピオカミルクティーの生みの親、春水堂(チュンスイタン)が仕掛ける新業態「TP TEA(ティーピーティー)」だ。開店前から延びる列が、ビジネス街の新風景となっている。3年前に上陸した「Gong cha(ゴンチャ)」は、台湾茶人気をけん引する存在。1号店の原宿表参道店は平日でも1日約1000人が詰めかける。
ティーピーティー
ゴンチャ
TP TEAや春水堂、ゴンチャはもちろん、ここ数年で台湾茶チェーンがこぞって進出し、しのぎを削っている激戦区が新宿だ。台湾スイーツの専門店としてこの夏、新たに「台湾甜商店(タイワンテンショウテン)」と「騒豆花(サオドウファ)」も加わった。
タピオカミルクティー自体は新しくない。しかし、昨今の台湾ブームを追い風に台湾茶そのものに光が当たり、客層が大きく拡大。さらに、見た目がおしゃれで、さまざまに味をカスタマイズできるなど、何度でも来たくなる店が増えた。ゴンチャの日本法人を率いる葛目良輔社長兼COO(最高執行責任者)は「『コーヒーが苦手なスタバ好き』を取り込めている」とみる。
タイワンテンショウテン
フォーチュナーティーボックス
ビールのように見えて正体は「チーズティー」。中国からアジア各地に広まった「飲むスイーツ」が8月に原宿に進出した。鉄観音茶や四季春茶、アッサムティーにホイップしたチーズが載り、飲むと白い口ひげができるのもフォトジェニックとして話題に。
台湾と並ぶ、もう一つのトレンドが、進化系のインスタ映えだ。見た目が美しいのはもちろん、その場にいないと味わえない特別な体験が受けている。
渋谷の雑居ビルの3階、分かりやすいとはいえない場所にありながら夜まで行列が絶えないのが、札幌発祥の夜パフェ専門店「パフェテリア ベル」だ。
「旬のフルーツを大胆に盛り付けたパフェはさながらグラスの中のアート」(スイーツコーディネーターの下井美奈子氏)。創作パフェとシャンパンや自家製サングリア、ワインなどとのマリアージュも楽しめる。夜の渋谷に締めパフェという新文化を定着させた。
パフェテリア ベル
北海道発祥の夜パフェ専門店。2017年10月に渋谷に進出し、女性の間で飲んだ後の締めの新定番になった。季節のフルーツをアートのように盛り付けたパフェはインスタ映え必至。アルコールとのマリアージュも楽しめる。

17年6月に開業した原宿の「ロールアイスクリームファクトリー」も、いまだに数時間待ちが続く。プレートの上でくるくる巻かれた独特なアイスの食感がリピーターを呼んだ。代々木公園近くの「モンブランスタイル」は、持ち帰りができない。僅か8席のカウンターで作りたてのモンブランが供され、手もみ茶日本一の小室栄寿氏の日本茶で一服する。この至福の体験を求め、平日昼にも行列ができるのだ。共通するのは、「ここだけ」のひととき。インスタ映えの新名所を生む条件である。
ロールアイスクリームファクトリー
コールドプレートの上で花束のようにアイスを巻き上げる「ロールアイス」の専門店。17年6月にオープンした1号店の原宿・表参道本店は最長で5時間待ちとなり、現在も大行列だ。大阪、名古屋にも進出し4店舗にまで拡大した。
モンブランスタイル
谷中銀座の和栗専門店「和栗や」が5月、代々木公園近くにオープンしたモンブランの専門店。カウンター8席のみで、1日最大100食。連日、開店直後に整理券がなくなるほどの人気で、日本一の手もみ茶と共に作りたてのモンブランが味わえる。

フリッパーズスタンド
ベイクルーズグループによるスフレパンケーキプリン専門店。FLIPPER’Sの看板メニュー「奇跡のパンケーキ」とカスタードプリンを掛け合わせたテイクアウトの進化系プリンで、製造が追い付かず、新宿店は数量限定販売が続く。
香港のミシュラン点心が上陸
添好運 Tim Ho Wan
ティム・ホー・ワン
(写真/高山 透)