AI(人工知能)などデジタル技術を駆使して社会課題の解決に挑む若き起業家たちにフォーカスする特集。第3回は、教育改革に挑む起業家を紹介する。AIを使い一人ひとりに合ったパーソナライズラーニングサービスを提供するatama plus(東京・中央)代表取締役CEOの稲田大輔氏と取締役COOの中下真氏だ。

atama plus代表取締役CEO
atama plus取締役COO
「日本の教育は150年間全く変わっておらず、これからの社会で活躍できるような人が育成しにくいのではないか、日本の教育にはまだ変化の余地がある」と思って、2017年4月、東大のテニスサークルで一緒だった稲田氏と中下氏は、稲田氏と同じ学科だった川原尊徳氏(36歳)と3人でatama plusを創業した。
稲田氏は「150年前の最先端テクノロジーを活用していた富岡製糸場は、作業員がマニュアルに従ってスピーディーに作業をこなしていた。グーグルは新しいアイデアで多様な価値観の仲間を引っ張って新しい事業を生み出している。社会は大きく変化しているが、この150年間、日本の教育は全く変わっていない」と話す。
稲田氏は大学時代にはエンジニアリングを学んだが、その後、ビジネスを学びたいと思って06年4月、三井物産に入社した。三井物産には11年間勤務したが、あるとき当時同社にはなかった教育事業を始めることになった。最初はベネッセホールディングスと一緒にブラジルに行って合弁会社ベネッセブラジルを設立したり、海外のエドテック(先端技術を活用した教育)といわれる領域のスタートアップ企業に出資したりした。
「ブラジルでは、公立学校でもAIタブレットやパソコンを使っている。教育に先端テクノロジーを取り入れているのは、日本以外では当たり前。テクノロジーを活用して社会で活躍できる人たちを育てたいと思った。3年前に帰国して立ち上げの準備を行った」と、稲田氏はatama plus創業の経緯について解説する。
中下氏は小学生の頃からずっと学校の先生になろうと考えながら過ごしてきた。大学に入って文部科学省に行こうと思ったが、結局、リクルートに入社した。リクルートでは、人事や営業、社長秘書、新規事業、中国法人の責任者になったりするなど、ビジネス分野を歩んできた。そんな中下氏は「日本の教育に対して、テクノロジーを使ってもっともっとできることがあると考えている。学習につまずいて夢を諦める子を一人でも減らしたい。そして、学校における学習以外の社会に出て必要なスキルを磨く経験を、子どものうちからもっともっとしてほしい。鹿児島出身ということもあり、子どもたちが住んでいる場所にかかわらず、良い教育の機会が得られるようにしたい」と話す。

atama plusのもう1人の創業者である川原氏は、稲田氏と同じ学部・学科の出身。卒業後はマイクロソフトに入社した川原氏はプログラミング歴28年の生粋のエンジニアで、取締役CTO(最高技術責任者)として、AIを活用した教材の開発に取り組んでいる。
AIの活用で基礎学力を身に付ける時間を半分以下に
教育には2つある。まずは数学や英語、国語、物理、化学などの基礎学力を身に付けること。もう1つは社会で生きる力、すなわちコミュニケーションする力やプレゼンテーションする力、共同で働ける力を身に付けることだ。稲田氏に言わせれば、
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