中国を代表する蒸留酒である白酒(バイジョウ)が、消費量減少という逆風をはねのけ、再び注目を浴びている。接待需要の減少に加え、古くさいイメージとアルコール度数の高さなどを若者が敬遠していたが、そこに新興メーカーが参入。新しい風を吹き込み、若者を中心とした新たな消費者の獲得に成功している。

 日本においても、日本酒の市場が著しく縮小している。日本酒の出荷量はピーク時で170万キロリットル(1973年)あったが、年々落ち込み、最近の調査では53万3000キロリットル(2017年)と、ピーク時の約3分の1。その主因として、若者の酒離れが挙げられる。

 中国でも状況は同じだ。一般的に、中国を代表するお酒というと「紹興酒」が知られている。紹興酒は中国浙江省紹興市が発祥で、もち米や麦麹などを原材料とする醸造酒だ。日本の中国料理店でも、紹興酒をよく見かけるが、実際には紹興酒は中国南部で好まれる酒であり、中国北部では白酒が多く消費されている。

 白酒は紹興酒と違い、コーリャン(高粱=モロコシ)などの穀物を原材料とする蒸留酒であり、アルコール度数が高く、からみが強いのが特徴だ。白酒はウイスキー、ブランデーと並ぶ世界三大蒸留酒の一つであり、種類も味も豊富ながら、近年、若者からは敬遠されていた。

 白酒は古くから中国北部を中心に多く消費され、「八大名酒」と呼ばれる「茅台(マオタイ)」や「五粮液(ウーリャンイェ)」といったブランドがよく知られている。今でも、接待などビジネスの場で白酒は欠かせない“潤滑剤”として愛されている。だが、白酒の生産量、出荷量ともに2016年に絶頂期を迎えた後、落ち込んでいる。

新宿歌舞伎町前にある五粮液の広告
新宿歌舞伎町前にある五粮液の広告

 白酒の黄金期と呼ばれる05年から12年の間、中国の高度経済成長に伴い、白酒の消費量は著しく増加した。だが、実は白酒の消費の大半は軍や政府機関、国営/民間企業などといった組織であり、いわゆる接待消費が白酒市場の成長を支えていたという。

 この時期、茅台は特に出荷量が伸び、一時期はプレミアが付くほどの人気だった。しかし13年、習近平氏が国家主席に就任すると、“三公消費”(公務による海外出張、公用車の使用、公務接待)を徹底的に取り締まり、茅台をはじめとする白酒の著名ブランドの価格は一斉に暴落した。

 公務接待による消費量が激減したため、白酒メーカーも生産量の縮小を強いられた。そこに追い打ちをかけるように、若者の白酒離れが顕著に現れてきた。三公消費の取り締まりの影響も出荷量自体にはすぐに見えなかったが、16年を境に激減。18年の白酒の出荷量は2340万トンと、11年の出荷量2420万トンを下回った。しかし、興味深いことに、この逆境はたった1年で打破され、今では、若者の間でひそかな白酒ブームが到来しているという。

中国国家統計局より
中国国家統計局より

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