中国では「網紅(ワンホン)」と呼ばれるインフルエンサーが強い影響力を持つ。インフルエンサー活用の重要性は言うに及ばないが、一方で、彼ら、彼女らが活躍するショートビデオ投稿サービス市場の成長には陰りも見え始めた。その中で注目を集めつつあるのが、「KOC」と呼ばれる存在だ。

 日本で「TikTok」の名で知られている「抖音(ドウイン)」以外にも、中国では農村部を中心に愛用されているショートビデオ投稿サービスがある。それが7億人のユーザーを擁す「快手(クゥアイショウ)」だ。

ショートビデオ投稿サイトとして1、2を争う「快手(クゥアイショウ)」のロゴ
ショートビデオ投稿サイトとして1、2を争う「快手(クゥアイショウ)」のロゴ

 2019年6月に日本経済新聞電子版[注1]でも取り上げられたクゥアイショウだが、前述のように、彼らがターゲットとしているユーザーは都市部の若者ではなく、第二、第三都市(セカンドティア/サードティア)などの地方や農村部のユーザーだ。クゥアイショウはこれらのユーザーを取り込み、アプリ内でeコマース機能を設けることによって、地方からも容易に特産品の宣伝や、販売をすることができる。

クゥアイショウのユーザーは中国農村部に多い(出所/日本経済新聞電子版2019年6月11日「農村7億人つかんだ動画『快手』 中国、TikTokと競る」)
クゥアイショウのユーザーは中国農村部に多い(出所/日本経済新聞電子版2019年6月11日「農村7億人つかんだ動画『快手』 中国、TikTokと競る」)

 TikTokを展開する字節跳動(バイトダンス)の創始者である張一鳴氏と同じく、クゥアイショウの創始者・宿華氏も「80後(バーリンホウ、1980年代に生まれた世代)」だ。彼は新華社のインタビューで、クゥアイショウについて次のように説明している。

 「クゥアイショウはショートビデオを通して人々の交流を深めることを目標とするプラットフォームであり、特に人気があるインフルエンサーを必要としていない。社会の中に点在している人々が、(クゥアイショウの)コミュニティーで交流することによって、彼ら自身がインフルエンサーとなる」[注2]

 クゥアイショウはこのように「土味文化」と呼ばれるちょっとダサく、田舎っぽいコンテンツを武器にしている。常にトレンドを追い、イケてるコンテンツを配信し続けているTikTokと一線を画し、ショートビデオ投稿サービス市場で競う。

 中国では大躍進を遂げているインフルエンサーとショートビデオ投稿サービス市場だが、実は近年、陰りが見られる。

 前回の記事でも少し紹介したが、16年に中国は“インフルエンサー元年”を迎え、18年には絶頂期に達した。だが、中国のデータサービス会社QuestMobileが19年4月に発表した「2019年中国インターネット業界春季リポート(QuestMobile China Mobile Internet 2019 Spring Report)」[注3]によると、19年3月時点で中国のショートビデオ投稿サービスの月間アクティブユーザー数は8億人に達したものの、すでに成長スピードは低下しており、業界のピークは過ぎたという。

ショートビデオ投稿サービス業界のMAUとユーザー浸透率
ショートビデオ投稿サービス業界のMAUとユーザー浸透率
出所/QuestMobile「2019年中国インターネット業界春季リポート(QuestMobile China Mobile Internet 2019 Spring Report)」

 現在、中国のショートビデオ投稿サービス市場ではバイトダンス系と呼ばれるTikTokや「火山小視頻(フォーシャンシャオシーピン)」のほか、クゥアイショウや百度(バイドゥ)、騰訊控股(テンセント)のサービスがしのぎを削る。その中でもTikTokとクゥアイショウは圧倒的なユーザー数と市場占有率を誇り、他を寄せ付けない。

 ところが、前述のように市場自体がすでに飽和しつつあり、今以上の新規ユーザーの増加は難しいという。またショートビデオ投稿サービスではないが、インフルエンサーが多く利用する中国SNSの先駆者「微博(ウェイボー)」も18年第3四半期に売り上げの伸び率が大幅に下降。設立以来2桁以上の伸び率を誇っていたウェイボーだが、19年には1桁台へ減速した。中国の広告業界は急速に冷え込んでおり、ウェイボーをはじめ、バイドゥやアリババなどといった大手IT企業の広告事業も打撃を受けている。

ウェイボーの四半期別の純収益と伸び率
ウェイボーの四半期別の純収益と伸び率
注:ウェイボーのリリースを基に作成
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