日常生活のデジタル化が進む中国。その状況は、日本の将来を占ううえで示唆に富む。前回に続き、上海在住の日本人男性に密着。キャッシュレス決済がインフラ化していることで、どのようなメリットを感じているかなどを聞いた。
上海在住邦人が日常的に使用するアプリとは
日本の広告制作会社の上海支社代表を務める岩永明(36歳)さん。2010年から上海に住んでいる。この日、デリバリー注文したランチを食べながら、岩永さんが日常的に使っているアプリを教えてもらった。「WeChat(ウィーチャット)」「大衆点評」「百度(バイドゥ)」、これにプラスして岩永さんは出張が多いので、旅行系のアプリが多く入っていた。
特に気になったのが、画面左上にある中国東方航空のアプリ。チケット管理ができ、アプリでチェックインも可能だという。出張が多く、飛行機に乗る回数が多いという岩永さんは、このアプリでマイルもためているという。
画面上段の真ん中にあるのは「Ctrip(シートリップ)」で、旅行予約サイトのアプリである。上海に本拠地を置くオンライン旅行会社が運営している。
ちなみに、ランチのデリバリー注文は30秒ほどで終わり、到着まで約10分だった。
ランチの後、午後は外で打ち合わせがあるというので、同席させてもらった。打ち合わせ場所となるカフェまでは徒歩で20分ほど。
歩きながら話を聞いていくと、WeChat Pay(ウィーチャットペイ)、Alipay(アリペイ)が普及して以来、中国で生活している間は財布を持ち歩いたことがないそうだ。日本に滞在しているときは、カードをたくさん持ち歩くよりも現金かSuicaを使うことで、ほとんどまかなっているという。
中国とは異なり、日本はキャッシュレス決済の事業者が多いので、結局どれを使うか考えるのが面倒だという。上海にいる間はスマホのみを持ち歩き、データを定期的にバックアップすることで、万が一スマートフォンを紛失しても、すぐに対策を講じられるようにしているという。
カフェでの支払いもキャッシュレス
打ち合わせのために訪れたのは、地下鉄衡山駅の近くにある「Kru」というカフェ。2階には別のビストロが入っていたり、向かいの建物には日本料理店が入っていたりするなど、この辺りはおしゃれな洋式の建物が集まる地域でもある。近年、中国でもこのようなおしゃれなカフェが増えてきたそうだ。韓国からのフォトジェニックブームが影響しており、中国ではスターバックスなどの大手企業が打撃を受けているという。
この日、岩永さんが打ち合わせしたのは上海在住の日本人で、Web関連の仕事をされている方だった。休日も一緒に食事をする仲だという。
中国企業の依頼を受けて仕事をすることもあり、最近ではウィーチャット用の10秒尺の動画を制作することも多いという。ウィーチャットでは、10秒動画を無料で配信できる。日本のテレビCMの尺は15秒が一般的だ。中国には70ほどテレビ局があるが、どこもCMは30秒尺が基本なので、15秒尺のCMは制作することはないという。
打ち合わせを始めてから1時間ほどたち、会計のために店の中へ。ウィーチャットペイでコードをスキャンしてもらい、支払う。
その後、岩永さんはオフィスに戻るということで、地下鉄ではなく配車アプリの「滴滴出行(DiDi、ディディチューシン)」で車を呼んだ。 DiDiは2018年秋に日本でもサービス提供を始め、東京でも利用できるようになった。
岩永さんがDiDiをよく利用するのは、路上でタクシーを捕まえるよりも安全で、支払いもアプリに事前連携しているウィーチャットペイ、アリペイでできるので、スムーズに降車できるから(現金払いも可能)。日本で中国人観光客がDiDiを使用する際も、ウィーチャットぺイやアリペイで支払いができる。
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