飲食業界で果敢に新しいビジネスモデルにチャレンジする3人の経営者と、「モビリティ×飲食」の未来について考えるリモート座談会の後編。アフターコロナに向けた飲食ビジネスの在り方、飲食とモビリティがつくり出す新ビジネスの可能性とは?
※ 前編「コロナ禍で『ファンの有無』が浮き彫りに 飲食業の新常態とは?」はこちら
MaaS Tech Japan 日高 洋祐氏(以下、日高氏) 急増している在宅勤務者へのアプローチで考えると、レストランから宅配されるウーバーイーツなどのデリバリー、固定店舗のテークアウト、そしてMellow森口さんのフードトラックと、複数の選択肢があります。その辺りは今後どのようになっていくと思いますか。
favy 高梨 巧氏(以下、高梨氏) まず、新型コロナ禍によって、「移動のコスト」がフォーカスされたと思うんです。これまで毎日会社に行くことを移動コストとは捉えていなかったものが、今回変わった。移動コストまでを考えると、外食するのと、家で食べるのは全然違ってきます。外食マーケットは25兆~28兆円とひとくくりに捉えるのではなく、実は細分化された食行動パターンの積み重ねだった、ということを改めて意識するきっかけになりました。
また、私たちはコミュニケーションを取るためのプロセスとして飲食店を使っていました。コストをかけて移動してまで、外で人と会ってご飯を食べるのは、そのためです。でもテークアウトは家の中で家族と食べるわけですから、そこに親密さを構築するプロセスは必要ありません。単に食事形態の違いだけでなく、そこに含まれる価値も違ってきますよね。
REALBBQ 福山 俊大氏(以下、福山氏) 固定店舗では、「行列」が新しい衝動来店を生み出してくれます。一方、目的来店の人を連れてくる要因となるのは、UGC(ユーザー作成コンテンツ)。REALBBQは15年にスタートしましたが、ちょうどInstagramが普及したタイミングと重なりました。そんな中、「銀座のビルの屋上を貸し切ってバーベキュー」という非日常性がSNSで拡散され、新しいお客さんを連れてきてくれた。
これからは、移動コストをかけてまで店舗に来てくれるお客様に対して、単に食事を提供するだけでない、「やってみたい」という強い動機になるものを提供することを意識する必要があると思います。
日高氏 なるほど。Mellowはフードトラックですから、どこへでも移動できるのが特徴です。一方で、出店する場所に依存する面もあるのではないでしょうか。
Mellow 森口 拓也氏(以下、森口氏) 場所性はすごくありますね。デリバリー、テークアウト、キッチンカー、コンビニ、そして自炊と、食事には多様な選択肢があるわけですが、家庭の家計を100としたときに、どういう割り振りになるのだろうか、というのを大きな問いとして持っています。
食事には、まず誰と何のために食べるかという目的軸がありますよね。一方で、今挙げたように「どんなふうに食べるか」という手段も複数あります。そして手段ごとにコスト構造が違うんですね。デリバリーなら、配送料やシステムの利用などで食事そのもの以外に1000円くらいは追加のコストがかかる。一方、テークアウトなら、配送コストはお客さん自身が持つ形になります。だから私たちは「目的×コスト構造」でニーズを考えています。
例えば、晴海辺りのタワーマンションでは、新型コロナによって自炊の機会が明らかに増えました。言い換えると、これは料理を作る人が自炊のコストを負担しているわけです。でも共働きだと、さすがに2人でそのコストをすべて負担するのは厳しい。でも、テークアウトはお店から少し離れたエリアだと取りに行くのが大変で、デリバリーは少し高い。そんなケースが1台当たり70~80件を超えると、フードトラックという選択肢が成り立つわけです。晴海のタワマンでは、オフィスエリアより多く売り上げるケースも出てきていますよ。
人々の「おなかがすく」タイミングが変わる?
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