MaaS実現の先にある未来を、他産業の専門家と探る本連載。今回は特別編として、飲食業界で果敢に新しいビジネスモデルにチャレンジする3人の経営者に、「モビリティ×飲食業」の未来について語ってもらうリモート座談会を開催した。

上左から座談会に参加したfavy社長の高梨 巧氏、REALBBQ取締役の福山 俊大氏、Mellow代表の森口 拓也氏。下がMaaS Tech Japan社長の日高 洋祐氏
上左から座談会に参加したfavy社長の高梨 巧氏、REALBBQ取締役の福山 俊大氏、Mellow代表の森口 拓也氏。下がMaaS Tech Japan社長の日高 洋祐氏

 飲食業界は、今回の新型コロナウイルスによる外出自粛などの動きで、特に厳しい状況に立たされた業界の1つだ。緊急事態宣言によって街から人が消え、感染防止のために通常営業の休止を余儀なくされた店舗も多い。

 そんな中、今回座談会に参加したfavy社長の高梨巧氏、REALBBQ取締役の福山俊大氏、そしてMellow代表の森口拓也氏は、いずれも飲食業界に新しいアイデアとテクノロジーを持ち込み、従来の飲食の常識にとらわれない新しいチャレンジをしている。

 環境が激変する中、飲食業界はどこへ向かうべきか。そこでモビリティはどんな役割を果たし得るのか。人々の生活様式の変化の先にある可能性について、MaaSの社会実装を推進するMaaS Tech Japan社長の日高洋祐氏モデレートの下、前後編でお届けする。

MaaS Tech Japan 日高 洋祐氏(以下、日高氏) まずは、改めて皆さんの事業内容と、コロナ禍でどんな影響を受けているのかお話しいただきたいと思います。

favy 高梨 巧氏(以下、高梨氏) favyは「飲食店が簡単に潰れない世界」をつくることを目標として、飲食店のDX(デジタルトランスフォーメーション)を手掛けている会社です(関連特集「必ず儲かる!外食ビジネスモデル革命 ~スタートアップ・favyの挑戦~」)。

 飲食店のためのサービス開発・提供に加え、完全会員制の肉料理レストラン「29ON(ニクオン)」や月額定額制のコーヒーショップ「coffee mafia(コーヒーマフィア)」など、直営店舗を11店保有しており、「どうやって飲食店をデジタル化していくのか」を実際に自分たちの店舗で検証しながら日々考えています。グルメメディア「favy」も運営しており、現在、月間約6700万人の方が閲覧してくれています。

favy 高梨 巧氏のプレゼン
favy 高梨 巧氏のプレゼン

 さて、「コロナになってどう?」という質問はものすごく聞かれますが、率直に言って「かなりヤバイ状況」です。飲食業は、他の業種ほど財務を強固な状態にしなくともやっていけるのがいいところでもありました。そのため、比較的早い段階で厳しくなっている店舗が非常に多いという感触です。

 コロナ禍でfavyは、システム利用の無料化や応援チケットの仕組みなどを早い段階から提供してきました。応援チケットは、常連客や店舗のファンに対して「将来使えるチケット」を販売するものですが、すでに500店舗近くが参加。1店舗当たり100万円を超える店舗も出てきており、予想以上にうまくいっています。

 今回の新型コロナで感じていることは、単に「立地が良い」「利便性がある」というだけで商売が成り立っていた店と、きちんとファンがいた店の違いが、すごく明確になったということ。ファンがいる店は、テークアウトや応援チケットなどに販売形態が変わっても、しっかりお客さんがついています。

 私たちのビジネスに目を向けると、実は問い合わせは平時と比べて20倍くらいに増えています。すごく多くの飲食店が、「これを機会に新しいことをやろう」と活発に取り組んでいて、コロナ後も数字は伸びている状況です。具体的には、4月は新たに602店舗がスタートし、5月もそれを上回る実績。サブスクサービスの累計流通総額も初めて1億円を突破しました。

REALBBQ 福山 俊大氏(以下、福山氏) 私たちはバーベキュー場を運営している会社です。「貸切型屋上BBQ場」と「大型BBQビアガーデン」の2種類の業態がありますが、いずれも暖かい時期に特化した、季節性のある業態です。

 貸切型屋上BBQ場は、銀座や赤坂など、山手線県内の好立地のビルを中心に14店舗を運営。1日1組限定でビル屋上を貸し切り、バーベキューができるもので、利用者は年間3万人超となっています。大型BBQビアガーデンの方はもう少しカジュアルな業態で、タワーレコード渋谷や池袋など、4店舗を展開中です。例年だとゴールデンウイーク前の4月末から9月いっぱいくらいまで稼働しています。

 どちらの業態も賃料がレベニューシェアで、変動費化できている点が特徴。中小規模のオフィスビルの屋上というのは、使い道がないんですね。これまで収益化ができなかった未利用のスペースなので、こうした契約形態が成り立つ。私たちは屋上スペースの狭さを逆手にとって「貸切型」というプレミアム感をプラスして提供しています。

REALBBQ 福山 俊大氏のプレゼン
REALBBQ 福山 俊大氏のプレゼン

 また、19年12月に子会社のwackwack creativeで飲食事業を始めました。ネオギョーザ居酒屋の「トーキョーギョーザクラブ」を神田にオープン。店内はポップな雰囲気で、人気メニューはメロンソーダ。「日本一メロンソーダが売れるギョーザ屋」だと思います(関連記事「ギョーザ店なのに看板商品は『クリームソーダ』 若者ヒットの謎」)。

 2月に女性インフルエンサーの方が偶然来店し、Twitterでバズりました。その後、人気YouTuberのエミリンさんに来店いただいたことで一気に知名度がアップして、3月には過去最高の売り上げを達成(紹介動画の再生数は80万回超え)。緊急事態宣言が出る直前まで店内は若い女子だらけで、毎日3回転するような状態でした。

 その後、新型コロナで店は一時閉めざるを得ませんでしたが、1週間以内にECプラットフォームのBASEを使ってECショップを立ち上げました。するとECショップのオープンから1週間で、なんと月間店舗売り上げの6割近くを達成しました。

Mellow 森口 拓也氏(以下、森口氏) Mellowは、フードトラックと空きスペースをマッチングするプラットフォームを提供しています。つい先日、従来の「TLUNCH(トランチ)」というブランドから、フードに限らずあらゆるサービスの移動型店舗を手掛ける「SHOP STOP(ショップストップ)」へ、リブランドしました(関連記事「コロナ禍にも強い移動型店舗 MaaS×異業種でまちづくりが変わる」)。

 私たちの事業モデルは、飲食における固定費を変動費化するという面で、少しREALBBQさんに似ているところがあります。従来は賃料設定されていなかったオフィスビル下の空きスペースに注目しました。そこを私たちが借りてフードトラック事業者さんに提供し、出店料の一部をビルオーナーさんに支払うというモデルです。出店料(賃料)は売り上げの15%と変動費化しています。現在は約850店のフードトラックと提携。大手不動産会社から工場、学校まで、空きスペースを持つ会社と幅広く付き合い、首都圏を中心に約240カ所で展開しています。

Mellow 森口 拓也氏のプレゼン
Mellow 森口 拓也氏のプレゼン

 新型コロナの影響ですが、正直、大打撃を受けました。3月までは結構粘っていましたが、緊急事態宣言が出るとオフィス街から一気に人が減り、売り上げが半分以下まで減った場所もあります。しかし、迅速にその後の対応はできたと思っています。

 具体的には、営業スペースの開拓戦略を方針転換しました。これまでは都心のオフィスビルにリソースを集中していましたが、それを郊外のタワーマンションに切り替えたんです。それが、マンション向けパッケージの「おうちでTLUNCH」です。私たちはモビリティをベースにしているぶん、柔軟にサービス拠点を変えられる強みがありますから、それを生かした形。在宅勤務によってタワマンの昼間人口は明らかに増えましたので、その人口動態の変化に合わせたのです。

 その結果、狙いはドンピシャで当たったと思います。屋外で購入して家に持ち帰って食べるので、三密が回避できます。しかも作り置きではなく、できたての料理を提供するという部分もテークアウトとは違い、受け入れられやすかった。

 一方、新型コロナによって、固定費がかかる固定店舗からフードトラックに業態転換する事業者も増えると見て、開業支援の提供も加速しています。フードトラックの開業コストは固定店舗の約3分の1で、売り上げに占める地代・家賃は15%で変動費化されていますから、売り上げが上下しても比率は変わりません。このためフードトラックは、今回のような危機にも比較的強い業態であると思います。

 もう1つ、4月に開始したのが、フードトラックのサブスクリプションサービス「フードトラックONE」。頭金と月額費用をもらうことで車両の制作、事業計画、営業場所の支援、保険などをMellowがフルサポートするというものです。

新型コロナで浮き彫りになった「目的来店」の重要性

日高氏 皆さん、ありがとうございます。新型コロナ禍を受けて、今後、飲食業界はどう変わっていくのか。そしてモビリティとの融合について、どういう姿があり得るのかを一緒に考えていければと思います。早速ですが、Mellowの森口さんは、営業先をオフィスビルからタワーマンションに切り替えたと。場所によって、提供するコンテンツ、サービス内容を変えているのでしょうか。

森口氏 はい。お弁当は従来同様提供していますが、マンションでは、例えば家庭向けにおかずだけを提供するような工夫も現場ではしています。やはり立地によって最適なコンテンツは全然違う。メニューだけでなく、営業時間帯も昼だけでなく夜まで延ばしている場所もあります。

高梨氏 森口さんはオフィスビルからマンションへと迅速にターゲットを変えられましたが、今回のコロナで「どこに誰がいるのか」という人口動態が、強烈なスピードで変化しました。これまで街の人口というのは、それなりの時間をかけて変化してきましたが、今回はあっという間に都心から人がいなくなりましたよね。

 従来の飲食店は、「賃料=交通量、人口密度」でした。ですから土地の発展に合わせて、何年という長い時間をかけて賃料が連動してきた。それが一気に変わったことが、今回ものすごく大きなインパクトになっているんだろうと思います。

福山氏 高梨さんがおっしゃるように、これまで飲食店というのは、「衝動来店」に頼っている部分が大きかったと思います。人通りの多いエリアの路面店の1階で、店の前に看板など情報を出しまくって、認知・興味・関心・来店というプロセスを、ほぼその場で決めてもらう。大部分の飲食店は、そんな集客に依存していた部分がかなりあったと思います。

 ところが、アフターコロナを考えると「おいしいエリア」「人が集まるエリア」というのはだんだん薄まり、分散していく方向ではないでしょうか。そうなると、今後は「目的来店」、つまり「この店に行きたいんだ」というファンをつくることが、これまで以上に重要になってきます。

 私たちの経験でいうと、トーキョーギョーザクラブは、あえて神田という、ある種の「おじさんエリア」に出店しました。ギョーザという商品は、ターゲットが老若男女、比較的幅広く取れるという特性があります。そこで私たちは、まずは近隣ビジネスマンの衝動来店をしっかり取りながら、並行してSNSで若い人たちの目的来店を取ることにチャレンジしたんです。

 ですからオープン当初は、男性比率が80~90%くらい。そのときから意識的にInstagramとTwitterを活用して、着実にフォロワーを伸ばしていきました。その積み重ねが20年2月にインフルエンサーの目に留まって拡散され、そこからは一気に、ほぼ100%が目的来店に。3月には、夕方になると店の前に20代の女性の行列ができているという状況まで持ってこられました。

 それだけのファンを獲得できたため、新型コロナで一時閉店という状況になっても「今は行けないけれど、ファンとして応援したい」「接点を持っておきたい」というお客様が多く、ECの売り上げをつくれたのかなと思います。新型コロナが発生してからSNSを始めたのでは、間に合わなかった。

森口氏 フードトラックビジネスの場合、目的来店ではありますが、半分習慣的な部分もあります。「毎週月曜はあの店が来ているから行こう」という。ハレの日の需要なのか、ケの需要なのか、という違いもあるかもしれませんね。我々は「動ける」からいいですが、固定店舗で衝動来店を待つだけだと、確かに厳しい。

座談会後編「MaaS×飲食 アフターコロナは「移動に値する体験」が必須に」に続きます。