新型コロナで浮き彫りになった「目的来店」の重要性

日高氏 皆さん、ありがとうございます。新型コロナ禍を受けて、今後、飲食業界はどう変わっていくのか。そしてモビリティとの融合について、どういう姿があり得るのかを一緒に考えていければと思います。早速ですが、Mellowの森口さんは、営業先をオフィスビルからタワーマンションに切り替えたと。場所によって、提供するコンテンツ、サービス内容を変えているのでしょうか。

森口氏 はい。お弁当は従来同様提供していますが、マンションでは、例えば家庭向けにおかずだけを提供するような工夫も現場ではしています。やはり立地によって最適なコンテンツは全然違う。メニューだけでなく、営業時間帯も昼だけでなく夜まで延ばしている場所もあります。

高梨氏 森口さんはオフィスビルからマンションへと迅速にターゲットを変えられましたが、今回のコロナで「どこに誰がいるのか」という人口動態が、強烈なスピードで変化しました。これまで街の人口というのは、それなりの時間をかけて変化してきましたが、今回はあっという間に都心から人がいなくなりましたよね。

 従来の飲食店は、「賃料=交通量、人口密度」でした。ですから土地の発展に合わせて、何年という長い時間をかけて賃料が連動してきた。それが一気に変わったことが、今回ものすごく大きなインパクトになっているんだろうと思います。

福山氏 高梨さんがおっしゃるように、これまで飲食店というのは、「衝動来店」に頼っている部分が大きかったと思います。人通りの多いエリアの路面店の1階で、店の前に看板など情報を出しまくって、認知・興味・関心・来店というプロセスを、ほぼその場で決めてもらう。大部分の飲食店は、そんな集客に依存していた部分がかなりあったと思います。

 ところが、アフターコロナを考えると「おいしいエリア」「人が集まるエリア」というのはだんだん薄まり、分散していく方向ではないでしょうか。そうなると、今後は「目的来店」、つまり「この店に行きたいんだ」というファンをつくることが、これまで以上に重要になってきます。

 私たちの経験でいうと、トーキョーギョーザクラブは、あえて神田という、ある種の「おじさんエリア」に出店しました。ギョーザという商品は、ターゲットが老若男女、比較的幅広く取れるという特性があります。そこで私たちは、まずは近隣ビジネスマンの衝動来店をしっかり取りながら、並行してSNSで若い人たちの目的来店を取ることにチャレンジしたんです。

 ですからオープン当初は、男性比率が80~90%くらい。そのときから意識的にInstagramとTwitterを活用して、着実にフォロワーを伸ばしていきました。その積み重ねが20年2月にインフルエンサーの目に留まって拡散され、そこからは一気に、ほぼ100%が目的来店に。3月には、夕方になると店の前に20代の女性の行列ができているという状況まで持ってこられました。

 それだけのファンを獲得できたため、新型コロナで一時閉店という状況になっても「今は行けないけれど、ファンとして応援したい」「接点を持っておきたい」というお客様が多く、ECの売り上げをつくれたのかなと思います。新型コロナが発生してからSNSを始めたのでは、間に合わなかった。

森口氏 フードトラックビジネスの場合、目的来店ではありますが、半分習慣的な部分もあります。「毎週月曜はあの店が来ているから行こう」という。ハレの日の需要なのか、ケの需要なのか、という違いもあるかもしれませんね。我々は「動ける」からいいですが、固定店舗で衝動来店を待つだけだと、確かに厳しい。

座談会後編「MaaS×飲食 アフターコロナは「移動に値する体験」が必須に」に続きます。