スマホのドライブレコーダーアプリに、ディープラーニングを活用した前方車両の検知機能を搭載する――。経路検索大手のナビタイムジャパンは、交通の安全に寄与する機能の開発で「第2回 ディープラーニングビジネス活用アワード」のモビリティ部門賞を獲得した。ディープラーニングの本格活用は同社では初の試み。短期間で低コストに開発を進めるためにSaaS型のAI(人工知能)サービスを活用し、3カ月ほどの開発期間でサービスインの実現に成功した。

 ドライブレコーダーの普及が進んでいる。トラブルや事故の際に状況を記録しておきたいというニーズが高まっているためだ。特に「あおり運転」による事故が報道されて以降、自衛のために購入する人が増えている。

 一方で、一般的にドライブレコーダーは、トラブルや事故が起きてしまったときの対応に役立つツールではありながら、事故そのものを事前に防ぐための機能は備えていない。事故を事前に検知する機能を搭載できれば、運転の安全を一層高められるのではないか。経路検索アプリやナビゲーションアプリなどで知られるナビタイムジャパン(東京・港)は、スマートフォン向けのドライブレコーダーアプリに、ディープラーニングを活用した前車との接近を知らせる機能を搭載し、予防安全機能の提供に一歩踏み出した。

 「前方車両の接近検知」機能をドライブレコーダーアプリに取り込むまでの経緯について、ナビタイムジャパンでパスビジネス事業部 事業部長を務める森田巨樹氏は、こう語る。「もともとカーナビアプリとして“カーナビタイム”を提供していて、このアプリにドライブレコーダー機能を搭載していました。昨今のあおり運転の問題などでドライブレコーダーのニーズが高まってきていたのですが、カーナビタイムの1つの機能として搭載しているだけではなかなかユーザーにドライブレコーダー機能を周知しきれていませんでした。そこで、ドライブレコーダーアプリを切り出して提供することで、存在をアピールすることにしました」。それが、KDDIのauスマホ向けに2020年2月20日に提供を開始した「ドライブレコーダーNAVITIME for auスマートパス」(以下、ドライブレコーダーNAVITIME)だった。

「ドライブレコーダーNAVITIME for auスマートパス」はauスマホ向けに、20年2月に提供開始
「ドライブレコーダーNAVITIME for auスマートパス」はauスマホ向けに、20年2月に提供開始

 ドライブレコーダーNAVITIMEの提供に当たって、ナビタイムジャパンでは早期の機能のアップデートを計画していた。そのときに検討対象になったのが、事故を事前に検知する機能だった。「ドライブレコーダーは事故を起こしたときに記録するものですが、事前に検知する機能が備われば交通安全により寄与することができます。何ができるかのアイデアを出したところ、車両検知、人の検知、標識の検知などが挙がりました」(森田氏)。ドライブレコーダーNAVITIMEの開発と並行して、アップデートの機能のアイデア出しから開発を進めた。

ナビタイムジャパン パスビジネス事業部 事業部長の森田巨樹氏
ナビタイムジャパン パスビジネス事業部 事業部長の森田巨樹氏

技術検証から始めて短時間で開発

 開発の検討を始めたところ、人や標識の検知は難易度が高く、開発に時間がかからず容易に実装できるのは車両検知だと分かった。「アプリの機能アップデートは定期的にスピード感を持って実現したいという考えでしたから、技術的に実現が容易と考えられた車両検知の開発を進めました」(森田氏)。

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