マグロのおいしさをディープラーニングで判定する。ミスマッチとも思える組み合わせのAI活用が、実用段階に入っている。「第2回 ディープラーニングビジネス活用アワード」で食部門賞を受賞した電通の「TUNA SCOPE」は、マグロの尾の断面の画像をディープラーニングによる画像認識で“目利き”するもの。スマートフォンアプリとして実装することで、コロナ禍で渡航が難しい中での海外のマグロ買い付けにも貢献している。

 「おいしいマグロが食べたい」。マグロ好きにとって、永遠のテーマがこれだろう。「高ければおいしい」とは限らないし、スーパーのパックの見た目に裏切られることもある。そんな日ごろのちょっとした不満が、ディープラーニングを活用したマグロの目利きにつながった。電通の「TUNA SCOPE」がそれだ。

 開発に携わったのは、電通 第4CRプランニング局でクリエーティブ・ディレクターを務める志村和広氏。「電通がマグロの目利き?」と思うかもしれないが、志村氏はこれまでにも広告だけでなく、サービス&プロダクト開発やイノベーション領域に取り組んできた、いわゆる電通マンとは一線を画す存在。大学・大学院ではバイオテクノロジーを専攻した、バリバリの理系だが、そんな志村氏をもってしても「AIやディープラーニングを使うのは初めての経験でした」と語る。

電通 第4CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクターの志村和宏氏。「TUNA SCOPE」をゼロから開発した
電通 第4CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクターの志村和宏氏。「TUNA SCOPE」をゼロから開発した

マグロの仲買人の「目」が欲しい

 志村氏は、冒頭の言葉を発した張本人でもある。毎日のようにマグロを食べたいというほどのマグロ好き。しかし、自宅近くのスーパーでマグロを買うとき、値段も見かけもだいたい一緒のマグロであっても、帰宅して食べてみると今日は当たり、今日はハズレということが往々にしてある。

 この当たりハズレをどうにかできないものか。とは言っても、切り身のマグロのおいしさを買う前に判断する方法はない。家庭内の定番の話題という程度のものだった。

 おいしいマグロを食べたいという個人的な欲求が、どうやってディープラーニングを活用したマグロの目利きシステムへと発展していったのだろうか。それはあるひらめきがきっかけだった。

 東京都中央卸売市場の築地から豊洲への移転のニュースを見ていたときのこと。テレビの画面には、冷凍マグロの尾の断面を見て品質を目利きする職人の姿が映っていた。志村氏は、「スーパーで買ってくるマグロにも使える “目”ができたらいいなと思いました」と語る。そこで取った次の行動が驚きだ。「マグロの目利きの目をAI化するプロジェクト」をいきなり電通で立ち上げたのだ。

目利き職人はマグロの尾の断面で良しあしを判断する(画像提供/電通)
目利き職人はマグロの尾の断面で良しあしを判断する(画像提供/電通)

 志村氏の仕事はクリエーティブ・ディレクターであり、ロジックで積み上げることよりも、直感したものを具体化して新しい価値をつくることが求められる。おいしいマグロを判別する「目」は、社会課題の解決につながると志村氏の直感がささやいたのだ。

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