商品の売れ行きを大きく左右するパッケージデザイン。その選定にディープラーニングを活用した。パッケージの好意度を5段階で予測するサービスを2019年4月に開始。200社以上が利用登録したという。市場調査に時間をかける現在のマーケティングが大きく変わっていくのかもしれない。

 マーケティングリサーチやパッケージデザイン開発を手掛けるプラグ(東京・千代田)は、毎年春と秋に「パッケージデザインランキング」を実施している。新商品として発売された500品目ほどの商品に対して、消費者から好意度を聞く。1商品について1000人にアンケート。累計で4115商品を調査してきたので、411万5000人分のデータが蓄積されているというわけだ。

 「こうした蓄積データがあるから、新サービスを始めることができた」と、同社社長の小川亮氏は言う。好意度とは、消費者がその商品のパッケージが好きかどうかを5段階で評価したときの、好き、やや好き、と回答した割合のことである。

1~5までの好意度スコアを2~3分で予測することができる
1~5までの好意度スコアを2~3分で予測することができる

 同社はこれをデータベースのサービスとして販売してきた。この膨大なデータをディープラーニングで学習させパッケージデザインを評価するAIを開発した。消費者への調査では、好意度を5段階で答えてもらうが、今回のAIは、開発中のパッケージ画像を解析することで、好意度のスコアを0~5の範囲で予測する。

 予測値の精度はアンケート結果の実測値とAIが算出した予測値とを比べて判断する。その結果、商品カテゴリーによってばらつきはあるものの、相関係数(全体として実測値と予測値がどれくらい相関しているか)が0.514、数値の絶対誤差0.25(相対誤差でいえば5%以下に相当)以下になる割合が72%という実績を出している。

 全データの85%を使って学習して導いたものを訓練データとし、残り15%分を評価用のテストデータとして検証した。とりわけビールや調味料、基礎化粧品などのカテゴリーでは高い精度が出ており、実用に堪え得る精度に到達した。11カテゴリーが利用できるようになっている。

好意度の分析結果を数分で算出

 実際、パッケージデザインの開発では、10点程度のデザイン案に絞って、消費者調査にかける場合はさらに3案程度にしてから実施することが多い。3案ほどにする際には、これまでは担当者の感性に頼るしかなかった。小川社長は言う。

 「最初のスクリーニングをする際のサポートという利用をまずは想定している。調査にかけるデザインを数案に絞り込むまでに、本来は優れたデザインがあったのに、それを見落としている恐れもある。好意度の数値がある程度AIで分かれば、意思決定の目安にできると思う」

デザインのどの部分が好意度と結び付いているかを視覚的に確認できる
デザインのどの部分が好意度と結び付いているかを視覚的に確認できる

 このサービスは、ウェブブラウザー上で利用できる。調べたい商品の画像をアップして、商品カテゴリーを選択。ブランド力を反映する係数として、商品名と企業名を「Yahoo!」で検索し、そのヒット数を「ブランドスコア」として入力する。

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