トラックのドライバー不足問題に一石を投じる。増員ではない。物流システムのモノフル(東京・港)がトラックのナンバープレート画像をディープラーニングで認識。物流拠点での“荷待ち時間”の短縮を図る。
「トラックのドライバー不足が叫ばれている。ただ実際の統計を見るとトラックの台数もドライバーの人員も大きく変化はしていない。ドライバー不足と言われる原因は、物流における輸配送の非効率性にある。生産性が低いのではないか」
物流向けソリューション開発、提供を行うモノフル社長の藤岡洋介氏はこう語る。同社は物流施設の開発、運営を手掛け、物流不動産で国内トップクラスのシェアを持つ日本GLPのグループ会社として2017年に設立された。
物流業界の課題に対して、日本GLPによる設備改善といった不動産の側面からの対策に加えて、ITを活用した効率面からの解決を目指している。モノフルは、同社が提供するソリューションにディープラーニングや機械学習を利用したトラックのナンバープレートの自動読み取り機能を組み込み、トラックドライバーの作業時間の見える化を容易にする取り組みを進めている。
藤岡氏は言う。「30年ほど前は約60%だった平均積載率が、足元では40%ほどに下がっている。現実は、トラックドライバーが不足しているのではなく、多頻度、小ロット化した配送ニーズに見合った効率の良い輸配送ができていないということだ。これをIT活用で効率化したいと考えた」。物流業界では、電話やファクシミリ、手書き伝票がまだ主流で、IT活用による生産性改善の余地が大きいという。
「待ち時間が長い」トラックドライバーの現実
物流業界の生産性が低い要因の1つが、先に触れた輸配送の効率の悪さにあることは間違いない。では、どのくらい効率が悪いのだろうか。「トラックドライバーが働いている時間のうち、実は運転している時間は半分にも満たないという統計がある。点検や荷物の積み下ろし、休憩などの時間はもちろん必要だが、それ以外に“荷待ち時間”がかなりある」と藤岡氏は指摘する。
荷待ち時間とは、物流倉庫などに着いたトラックが、荷物の積み下ろし作業に入るまでに待たされる時間だ。積み下ろしをするバースや待機所、周辺道路の混雑による待ち時間や、荷物や物流施設側の担当者の準備が整っていないことによる待ち時間など、要因は多岐にわたる。
荷待ち時間は最小化したいところ。一方、荷主側もバースの予約システムを導入して効率化を目指したとしても、トラックドライバー側に予約をしてから届けるといった文化が浸透せず実運用が難しい課題がある。
「現実的には、トラックが何時にバースに接車して、荷の積み下ろしをした後に何時に次の現場に向かったのかを用紙に記録する程度の対応にとどまっている。その記録用紙が積み上がるだけで、分析するに至っていないというのが現状だ」と藤岡氏。
それだけにフルにITを活用して効率化する前に、現状の可視化をして課題を抽出する必要がある。そこでモノフルは、導入障壁が低いサービスとして、トラック受け付け/予約サービス「トラック簿」を2019年4月にリリースした。「現状をデジタルデータとして記録することで待機時間や作業時間を見える化する。それにより倉庫の中や外で対策が打てる」(藤岡氏)。
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