ディープラーニング(深層学習)分野を日本でリードする東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊氏。同氏が理事長を務める日本ディープラーニング協会では、検定・資格試験を実施し、ディープラーニング人材の育成を進める。日本の社会や産業を変えていくために、松尾氏は何を見据えているのか。

東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊氏
東京大学大学院工学系研究科特任准教授の松尾豊氏

ディープラーニングのエンジニア育成を目指すE資格の保有者が、2回の試験で約500人弱輩出された。またディープラーニングの事業活用をするジェネラリストを検定するG検定は、合格者が合計6000人を超えた。こうした状況をどう評価しているか。

検定・資格制度は、順調に立ち上がっていると考えている。G検定は、ビジネスパーソンも含めた事業活用のためのジェネラリストの検定であり、母集団が多い。合格者の数が多くなるのも当然だろう。E資格はエンジニアの資格であり、試験の前段階として教育プログラムを受けなければならないためどうしてもハードルが高くなる。2回の試験で500人のE資格保有者を輩出したのは、順調な経過だと思う。

 先行したG検定は、各回の合格者数を見ると増加のカーブをたどっている。E資格について現時点で今後の状況を見積もるのは難しいが、G検定と同様に増加のペースを保って資格保有者が増えていくだろうと考えている。

だまされないためのG検定

検定・資格の試験を実施した効果は上がっているか。

G検定の合格者が増えてきたことで、ディープラーニングの事業活用を考えるジェネラリストの知識レベルが上がっている。G検定の合格者を多く輩出した会社では、ディープラーニングについての議論のレベルが確実に上がっていると感じている。その1つのメリットは、「だまされない」こと。G検定合格者のようなきちんとした視点で目利きができる人材を社内に確保することで、ベンダーなどの多様な提案に対して正しい判断ができるようになる。

 また、G検定保有者が企業にいると、私たちも技術の話を手加減しないでできるようになる。技術が分かることで、どのようにデータを集めて、どうもうけるかといったビジネスの本質に近い議論もできるようになる。特に企業にとって競争力に直結するような部分は、外部にアウトソーシングすべきではない。企業内にディープラーニングのジェネラリスト人材を確保するためにも、G検定は役立っている。

数年前から日本のAI(人工知能)活用が遅れていると危機意識を持っていた。2017年6月に日本ディープラーニング協会を設立してどう変わったか。

ディープラーニングを活用しても、ビジネスにつながらなければ意味がない。売り上げや利益に貢献することが最終的な目的であり、日本ディープラーニング協会の役割の1つはディープラーニングでビジネスを実行するノウハウを提供することにあると思う。

 国もAI活用に力を入れているが、実効的な施策はなかなかできていない。人材育成についても、IT人材をAI人材と呼び替えて育成に力を入れているが、実際の人材の純増は見えてこない。そうした中で、協会のG検定・E資格を取った人は、人材育成の面から見ると既存の人材の置き換えではなく、ほぼ純増の人材と言える。こうして人材の層が厚くなってきたら、次に活用のための土壌を整えていくことが必要だ。

 協会の中には、産業を促進する部会として「産業活用促進委員会」があり、ディープラーニング活用事例を集めている。日本では、他社が成功していると自社でも採用しやすくなる傾向がある。それだけにディープラーニング活用を広めるためには、事例を参照しやすくすることが重要だ。協会では事例を提供するので、売り上げにつながり利益が上がるようなヒントを得てもらい、ディープラーニングによるビジネス拡大につなげてもらいたい。

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