オークネット・アイビーエス(オークネットIBS)は、環境改善AI(人工知能)サービス「EDIS(エディス)」を提供する。AIによる画像認識をサービス構築の一つの“道具”としてうまく活用し、導入する産業廃棄物業者の業務効率化を支援する。
オークネットIBSは、オークションから不動産関連まで幅広くネット流通サービスを手がけるオークネット子会社でシステム開発を担当する。AIのPoC(概念実証)の段階から第一弾の運用を経て、多様なAI活用の段階に進んだ企業の1つ。肩の力を抜いて、効果がある部分に適材適所でAIを活用する姿が印象的だ。
オークネットIBSが提供するEDISでは、アマゾンウェブサービス(AWS)が提供する、ディープラーニングを利用した画像認識APIの「Amazon Rekognition」を使っている。
EDISは、産業廃棄物として処理される蛍光灯などの照明器具の「安定器」を、どのような方法で処分すべきかをAIの力を借りて判別できるようにするサービスである。人手をかけて調べなければならなかった作業を、AIに部分的に肩代わりさせることで効率化を図る。
照明器具の「安定器」の型番をディープラーニングで認識
現在ではLED照明に置き換えられて徐々に姿を見ることが少なくなっている蛍光灯だが、昭和の時代にはオフィスから工場、家庭まで幅広く日本の明るさを支えてきた。その蛍光灯を点灯させたり、安定して点灯を続けさせたりするために必要な器具が、安定器である。蛍光灯照明器具の心臓部とも言えるものであり、それだけに数えきれないほどの安定器が製造され、利用されてきた。
ところが、安定器の中にあるコンデンサと呼ぶ部品には、有害物質のPCB(ポリ塩化ビフェニル)が用いられていた。1957年1月から72年8月に製造された安定器の一部に、有害なPCBが使用されていたのである。政令で定められた手順に則って処理するためには、PCBが使用されていた安定器を判別し、分別する必要がある。この作業が、これまで人手に委ねられていたのだ。
PCB使用安定器の判別方法は、日本照明工業会がガイドラインを示している。「銘板が読めるかどうか」「メーカーが分かるかどうか」を基本とし、「力率」「製造年(月)」といった情報を目視で読み取って判別するものである。ビルや建物を解体するような場合に、産業廃棄物業者は1つひとつの照明器具の安定器を確認し、ガイドラインに沿って処理方法を判断していく。莫大な数の安定器が現存し、その作業量も非常に大きい。負荷は大きく、判別の正確性を保つことが難しい上、コストにも跳ね返ってくる。
こうした事業環境下で、オークネットIBSは産業廃棄物処理などの事業を手がける加藤商事(東京都東村山市)と共同で、安定器の判別システムを開発することになった。
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