中国BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)3社は、AI(人工知能)技術を集大成する自動運転領域に参戦している。3社が具体的にどのように自動運転を展開しているかについて解説する。
AIの急速な発展に伴い、自動運転が現実味を帯びてきた。実用化にはもう少し時間がかかりそうだが、自動車メーカーやAI大手企業は、極めて大きくなりそうな自動運転市場で主導権を握ろうと、技術開発にしのぎを削っている。中国BAT3社も、この“おいしそうなケーキ”を狙っている。
バイドゥは、自動運転オペレーションシステム「Apollo」を中核にオープン化戦略でエコシステムを形成し、全体的にリードしている。アリババは、自動運転物流車を突破口として、車・道協働のアプローチで地盤を拡大しようとする。テンセントは、自動運転向けのコネクターの役割を果たすべく、自社の強みを生かした自動運転用地図やシミュレーターで存在感を高めることを狙う。
以下では、BAT3社の自動運転戦略を見ていく。
自動運転に対する理念
BAT3社は、それぞれの経営戦略や事業状況により自動運転に対する理念が異なっており、これに伴う自動運転の位置付けやアプローチ、戦略およびビジネスのエコシステムも違ってくる。
*バイドゥは、オープン化こそ最強というAndroid流の信条を持っており、Android式自動運転オペレーションシステムを目指して、オープン化戦略で世界中のパートナーやデベロッパーと自動運転のエコシステムを構築しようとする。
*アリババは、道路側の知能化整備がないと、自動運転車のみでは本当の自動運転が難しいという判断のもとで、最初から車・道協働式アプローチで、自動運転車と道路の両輪で自動運転向けのスマートハイウェイを構築しようとする。またアリババのEC事業と密に関連している物流車の自動運転を突破口とすべく優先的に進めている。
*テンセントは、自動車メーカー、ソフトウエアプロバイダー、コンテンツプロバイダーなどとの共創にコネクターの役割が必要不可欠だという考え方を持っている。自動運転領域すべてに自ら参画するのではなく、自動運転用ソフトウエアとサービスのプロバイダーとして、自動運転向けの情報コネクターサービスを提供しようとする。
自動運転の技術部隊
自動運転ビジネスで勝ち残るには、継続的な技術研究開発と、これを支える技術部隊が必要だ。技術基盤が不足すれば、激しい競争ですべての努力が水の泡となってしまう可能性がある。BAT3社は、どうなっているかを見てみよう。
*バイドゥは、自社のロボティクス&自動運転ラボ、シリコンバレー・AIラボ、深層学習研究院などの機関を中心に技術研究開発を進めている。自動運転用マップは自社の百度地図(Baidu Map)、レーダーは投資した禾賽科技(Hesai Tech)を利用している。新興EV(電気自動車)メーカーの威馬汽車(WM Motor)、蔚来汽車(NIO)にも投資している。
*アリババ技術研究開発の中心は、自社達摩院配下の知能交通ラボ、達摩院・交通運輸部高速道路院の車・道協同ジョイントラボ、人工知能ラボなど。自動運転用マップは自社の高徳地図(amap.com)、レーダーは投資した速騰聚創(RoboSense)を利用している。自動車メーカーの小鹏自動車(XiaoPeng)、自動車向けインターネットサービスプロバイダーの斑馬網絡(Banma)にも投資している。
*テンセントは、自社のテンセント優図実験室、テンセント自動運転ラボを中心に、技術研究開発を進めている。自動運転用マップは、投資した四維図新(Navinfo)を利用している。バイドゥも投資したEVメーカーの威馬汽車(WM Motor)、蔚来汽車(NIO)の他、海外のテスラ(Tesla Motors)にも出資している。
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