中国BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)3社は、“三国鼎立時代”を創り出し、中国インターネットサービスに多大な影響を与えている。3社は膨大なデータ、優れたコンピューティング能力、実践ベースのアルゴリズム、多彩多様な利用シーンを武器に、それぞれのAI(人工知能)戦略を打ち出している。
BAT3社は、未来を制するためにAIへの布石を打ち、それぞれ独自のAI戦略を推進している。バイドゥの「オール・イン・エーアイ(All in AI)」、アリババのクラウドベースの「産業AI(AI for Industries)」、そしてテンセントの「エーアイ・イン・オール(AI in all)」。これらのAI戦略を理解するには、まずBATの基本的な状況、創業者の考え方、事業背景などを押さえておこう。
BAT3社の基本情報
BAT3社は、中国インターネット時代の“三国鼎立”を創出し、今もそれぞれの領域(検索、EC、SNS)において覇者として存在し続けている。3社とも上場企業であり、2018年12月31日時点での時価総額は、テンセントが約41兆円で1位の座を獲得しており、その次は約39兆円のアリババだ。バイドゥは、テンセントやアリババとかなりの差があり、約6兆円にとどまっている。
BAT3社の創業者情報
言うまでもないが、BAT3社の戦略は、創業者の背景や理念に大きく影響を受けている。特に以下の背景情報に注目してほしい。後述する3社のミッションやAI戦略は、そのまま創業者の経歴や背景を反映していると言っても過言ではないだろう。
バイドゥの創業者ロビン・リー氏は、北京大学出身で、米国留学の経験もあり、中国・米国のIT業界に詳しい人物。コンピューターサイエンス専攻で、バイドゥの検索エンジンを自ら開発した経緯もあり、技術開発への熱狂とこだわりが目立つ。北京生まれで北京で起業し、北京にバイドゥの本社を置くことも理解しやすい。
アリババの創業者ジャック・マー氏は、杭州師範大学出身で、専攻は英語。この背景があり、外国人とのコミュニケーションに長け、欧米に対する理解力やグローバルな視野を持つ。英語でのスピーチもネイティブレベル。ビジネス視点が強く、技術をあくまでもビジネスを実現する手段と捉えている。杭州生まれで、杭州で大学を過ごし、アリババの本社を杭州に置くことも自然な流れだ。
テンセントの創業者ポニー・マ―氏は、深圳大学出身で、中国本土でのビジネスを深耕する。専攻はコンピューターサイエンス。チャットツールで人生初の金儲けを経験したこともあり、技術を駆使してビジネスを拡大する「こっそり金儲け」のイメージが強い。深圳で大学生活を送り、テンセントの本社を深圳に置く。
創業者3人は、AIの捉え方も異なる。2017年5月に貴陽で開かれた「数博会(Big Data EXPO )」のパネルディスカッションで、ジャック・マー氏は「データは材料(インプット)だ。データがないと、何もできない」と発言し、「データ重視」の姿勢を鮮明にした。
これに対してロビン・リー氏は、「データより重要なのはイノベーションとテクノロジーだ」と主張し、「テクノロジー重視」の理念がうかがえる。
ポニー・マー氏は「利用シーン(市場)が何より大事だ。AIの利用シーンがないとビジネスは成り立たない」と強調し、「市場重視」の考え方が印象的だ。AIに対する創業者の捉え方は、後述するAI戦略にも影響を与えていると思われる。
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