マーケティング、コンサルティング、データ分析系の主要職種の中で最も求人数の伸び率が高かったのは、データサイエンティスト。求人数は2年間で何と7.5倍にもなっている。日経クロストレンドがエン・ジャパンの協力を得て、30~40代の転職サービス「ミドルの転職」における求人数、平均年収を調べた。
2008年のリーマン・ショックを底に、転職市場は活況である。厚生労働省が毎月発表する公共職業安定所(ハローワーク)における「一般職業紹介状況」によると、09年以降有効求人倍率は右肩上がりで、19年7月は1.59倍と高水準だ。
では、日経クロストレンドの読者に多い、30~40代のミドル世代の転職市場はどうなのだろうか。17年4月から19年6月までの期間、転職サービスサイト「ミドルの転職」における、3カ月ごとの求人数、平均年収を調査した。ミドルの転職の全161職種のうち、今回調査した職種は、日経クロストレンド読者に多い「マーケティングプランナー」や「データサイエンティスト」などの7種(詳細は下図)。まずは、求人数の変化を見ていこう。
調査した全職種において、求人数は増加していることが分かった。ミドル世代の転職市場は活況で、その中でも2年間で7.5倍と急増したのが、データサイエンティストだ。
データサイエンティストの求人数が急増した背景について、エン・ジャパン担当者は「IT・Web業界にとどまらず、金融や広告など、幅広い業界でデータサイエンティストのニーズが高まっていることが、募集増につながっている」と分析する。
マーケティング職の平均年収は?
年収(手取りではなく支給額)についても同様に、7つの職種で調査。全案件の平均年収650万円に対し、マーケティング系の7つの職種では753万円と高収入であった。その中で最も平均年収が高かったのは、戦略コンサルタントで908万円となった。戦略コンサルタントは、「マーケティング関連職の全体を統括するポジションにある」(エン・ジャパン担当者)ため、高年収だという。人材だけでなくプロジェクト全体のマネジメントや企画など、複合的なスキルが求められるため、提示年収も高くなっている。
年収では、戦略コンサルタントに及ばないものの、2年間での年収の伸び率を見ると、マーケティングプランナー・Webプランナーが109%、マーケティングリサーチ・分析が108%と高水準だ。この理由について、エン・ジャパン担当者は「実務経験者が採用マーケットに少ないため、採用競争率が上昇し、提示年収を引き上げる企業が増えている」と話す。
求人数が急増していたデータサイエンティストの年収の伸び率は、何と94%だった。エン・ジャパン担当者によると「データサイエンティストは比較的新しい職種。数年前はデータサイエンティストの経験がある人を採用したいなど、企業が求める経験値が高かったが、最近は条件が緩和され、データサイエンティストではないものの、データに基づく分析をしてきた経験がある人やこれからデータサイエンティストを目指したい人なども募集されるようになった。そのため、平均年収は少し下がった」と分析する。
また、キャリアステップを考えるには、マーケティング職の組織図を見ておくと良いだろう。「ブランド・プロダクトマネージャーをトップに、Web・デジタルマーケティング、マーケティングリサーチ・分析、マーケティング・販促企画がリサーチや販売、集客戦略を立案。この3つをマーケティングプランナー・Webプランナーが取りまとめる体制が一般的」(エン・ジャパン担当者)。
しかし、キャリアステップの仕方はさまざまで、例えば「Web・デジタルマーケティングから上流のブランド・プロダクトマネージャーを目指すルートや、データサイエンティストのスキルを身に付けるルートなどが考えられる」(エン・ジャパン担当者)という。
「(ミドル世代には)あくまで即戦力としての期待が大きいため専門職種の知識や経験が重視される。その一方で技術革新の早さによってスキルの陳腐化も早いため、ミドル人材であっても現在や未来に必要な知識を学習し、自らの専門性を更新し続ける姿勢が求められている」と、エン・ジャパンミドルの転職事業部長の天野博文氏は話す。
その中でも、マーケティング系職は「今の時代に必要なテクノロジーやトレンドをキャッチアップし理解する力、それを生かして各職種におけるテクニカルスキルを高めることが重要。加えて、マーケティングはあくまで事業を伸ばす手段の一つであるため、事業課題に即した企画や戦略を立案することができる人は、市場での評価が高い」(天野氏)。