2018年11月11日、中国アリババ集団が開催した「独身の日」セールで、資生堂が越境ECの売上高を前年比3倍に伸ばしたとみられることが、ECデータ事業のNint(ニント、東京・新宿)のデータから判明した。

中国で「独身の日」と呼ばれる11月11日。この日にアリババが開催する24時間限定の大規模なセール取引高は毎年伸び続け、18年も史上最高を更新した。2135億元(約3兆4160億円)は、17年の1682億元を26.9%上回る。
Nintが分析した独身の日セールのデータによると、ECサイト「天猫(Tモール)」が前年比121%、越境ECサイト「天猫国際(Tモールグローバル)」が前年比151%と伸びた。
日本企業が主戦場とするのがTモールグローバルだ。Tモールグローバルでは米国企業なども販売しているが、日本企業に限定すると以下の表のような売り上げ構成比(シェア)になる。化粧品を中心とする美容関連カテゴリーが17年、18年共に1位となっている。
日本企業のブランド別売り上げランキングに着目すると、18年は1位ムーニー、2位メリーズ、3位資生堂、4位Dr.Ci.Labo(ドクターシーラボ)、5位ウテナの順で、17年は6位だった資生堂が3位に躍進した。理由は「ヘアケアブランド『fino(フィーノ)』を中心に好調な資生堂旗艦店の売り上げが前年比3倍となり、ランキング向上に大きく寄与した」とNintでは分析している。
ただし、2018年の独身の日セールでは、日本から中国に商品を送る越境ECサイトであるTモールグローバルの売り上げ規模(日本企業も含む全体)は、Tモールの4%程度にとどまる。巨大なTモールで売り上げを伸ばしているのが、欧米の化粧品ブランドだ。
Tモールの商品カテゴリー別売上高ランキングを見ると、17年は4位だった美容関連(主として化粧品)が18年に3位にランクアップした。シェアで10.74%から13.96%に上昇した。「金額ベースでは2倍以上の伸び」(Nint取締役兼リサーチソリューション ゼネラルマネージャーの吉野順子氏)となった。
「要因はランコム、SK-IIといった欧米の大手化粧品メーカーのECモール内旗艦店が力を入れているから」と吉野氏は分析している。Nintの分析では、ランコムが出稿した広告枠数は資生堂のTモール旗艦店の約2.5倍に達しているという。日本メーカー以上に中国投資を加速しているようだ。
中国出身のNintマーケティング本部の馬莉氏は、「中国では20代、30代の女性の美意識が高くなってきている。特に口紅へのこだわりがあり、高級ブランドの高価な商品の中でも口紅は購入しやすい価格帯だ。背景には、インフルエンサーや、国内と海外の人気ドラマなどの影響もある」との見解で、美意識の高い層に向けてどの商品でどういうマーケティングを展開するかが成否の鍵となってきている。
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