飲食店情報サイト事業のぐるなびの業績が振るわない。直近の四半期の売上高は前年同期比で11.1%減となった。ぐるなびが不調の理由は消費者の動向を見れば一目瞭然だ。日経クロストレンドは、飲食店探しに消費者の間で使われているサービスについて調査。意外な結果が浮かび上がった。

「この1、2年で『ぐるなび』で集客できなくなった。特に都心店では効果がほとんどなくなっている。今はぐるなびに使う販促費はほぼゼロに近い」
飲食店経営のグットドール(東京・品川)の森田法義社長はこう明かす。同社は宮崎のブランド牛「尾崎牛」を手ごろな価格で食べられるビストロなど、7店舗の飲食店を都内で経営している。その店舗集客を目的に、これまでぐるなび、「食べログ」、「ホットペッパーグルメ」にそれぞれ均等に販促予算をかけてきたが、ぐるなびにかけていた予算を減らしたその分、「食材原価率の低下、『Instagram』での情報発信、『トリップアドバイザー』を活用したインバウンド需要の取り込みに人的リソースを割いていきたい」(森田氏)。
森田氏はこう続ける。「飲食店経営者で集まる会合ではぐるなびの活用に関する話題はほとんど出ない。今は食べログやInstagramの活用法、第三勢力である『Uber Eats』などの中食需要への対応に関する話題が飛び交う」。飲食店経営者の間でぐるなびの存在感は急速に失われつつある。
実際、ぐるなびが2018年10月31日に発表した18年度第2四半期の決算資料では、飲食店向けの有料サービス加盟店が前年同期比で1859減の5万8747店となっており、飲食店離れに歯止めがかからない。これが業績を直撃。売上高は前年同期比で11.1%減となる77億9500万円、営業利益に至っては69.7%減の4億3200万円となるなど、厳しい状況が続く。

一方、競合サービスに当たるカカクコムの「食べログ」の業績は堅調だ。食べログの18年度第2四半期の売上収益は前年同期比で21.2%増の59億5200万円。有料プランの加盟店舗数は同2500店増の5万7100店と好調で、減少傾向にあるぐるなびとは対象的だ。ところが、その食べログも安泰とは言えない。飲食店探しの主流がスマートフォンへと移り変わるなか、若年層の間で第二勢力が急速に支持され始めているからだ。
飲食店探しはスマホが主流
日経クロストレンドは調査会社のテスティー(東京・中央)の協力を得て、飲食店情報サービスの利用動向調査を実施した。テスティーの保有する調査パネルに対して、普段から使用している主なSNSや飲食店情報サイトについてアンケート調査を実施。年代別にそれぞれ10代(318件)、20代(334件)、30代(327件)40代(324件)の有効回答を得た。その結果、相対的にぐるなびが消費者の間でも存在感を失いつつある現実が浮かび上がった。
調査ではまず、「飲食店を探す際に利用するデバイス」について聞いた。すると、全年代でスマホが1位となった。若年層もさることながら、40代でもスマホと答えた人が約8割という結果になった。もはや飲食店探しで使うデバイスはスマホが主流だ。今いる場所から近くにある飲食店がすぐ見つかるなど、スマホでの使い勝手の良さでサービスは支持される。

次に「半年間で飲食店を探すときに最も利用しているサービス」を尋ねた。全年代で1位になったのが食べログだ。10代が20.4%、20代(35.0%)と30代(39.4%)は2位以下を10ポイント以上も上回った。40代も28.7%で1位と断トツの支持率だった。クチコミで店舗の評価が分かることから、外れを引かないための飲食店探しができるサービスとして貫禄を示す結果となった。

2位以下は年代によって票が割れた。特に10代は他の年代と全く異なる結果となった。10代が飲食店探しで食べログに次いでよく使うサービスはInstagram(19.5%)だ。若年層を中心に情報を探すサービスの細分化が進む。リアルタイム情報なら「Twitter」、化粧品情報なら「@cosme」といった具合だ。こうしたトレンドのなか、飲食店探しのサービスとしてInstagramが急浮上している。とはいえ、Instagramで飲食店を探すといった行為に、イメージが湧かない人もいるのではなかろうか。そこで、具体的にどのように利用しているのかを自由意見で聞いた。
多く寄せられたのは「Instagramで友達が投稿していた店をネットで検索する」方法。Instagram起点で気になる飲食店を発見して、詳細情報については他のサービスで調べるといった使い方だ。暇な時間帯にタイムラインで友達の投稿を見たり、ハッシュタグなどで検索したりして写真を眺めることが、偶然の出合いにつながっているようだ。一方、「Instagramでおしゃれなカフェを探す」といった目的を持ってInstagramで検索する意見も散見された。なかには「友達と食べるときはInstagram、家族で食べるときは食べログ」といったTPOで使い分けるという意見も寄せられた。
3位は「Google マップ」と「ぐるなび」が17.3%で同着となった。若年層の間では、出先で直接Google マップを使って飲食店を探す人が増えている。その場から近い飲食店を探せるうえに、グーグルはローカル情報の拡充に力を入れているため、口コミ情報までトータルで見られるサービスになりつつある。また、Google マップで検索して近くの店を見つけて、食べログなどで評価を確認するといった利用方法も定番のようだ。
30代、40代の2位はぐるなび、20代は?

10代には8.8%とあまり利用されていない「ホットペッパーグルメ」だが、20代では23.1%で2位に浮上する。支持の理由としては「行きたい店のクーポンを探す」「大人数で予約する際は、ポイントがたまるので使う」といった意見が多く寄せられた。ホットペッパーグルメは利点にクーポンやポイントなど、お得に使えるサービスが豊富な点が多く挙げられている。
調査では月の外食回数の平均についても聞いた。20代は月に3~5回外食をすると回答した人が34.4%で、10代に比べて13.3ポイント高い。大学や社会人になり、外食機会が増えるものの収入はさほど高くない20代は、よりお得に使えるサービスを支持する傾向があるようだ。


30代は食べログが39.4%と圧倒的な支持を集めているが、2位にはぐるなび(29.4%)がつけた。40代もぐるなびが27.8%で2位となっている。ぐるなびは飲食店探しの先駆者的なサービスとして、普及段階からインターネットに触れてきた30代、40代の間では今も存在感を保っている。一方で、若年層の間ではInstagram、Google マップといった新興勢力、ホットペッパーグルメといったよりお得に使えるサービスに後じんを拝している結果が明らかになった。スマホが飲食店探しの主流へと移り変わるなか、若年層を中心にサービスの勢力図は急激に変化している。
この変化に対応すべく、ぐるなびももがいている。同社は18年10月からInstagram経由で予約を受け付けられるサービスを開始。ぐるなびでネット予約機能を利用する飲食店は、Instagramに開設した自店舗のアカウント上に「席を予約する」ボタンを表示して、Instagram経由で予約を受け付けられるようになる。また、最短で15分以降で空席のある店舗を探せる「すぐ予約」機能をぐるなびのスマホ向けアプリに追加した。
スマホが普及してモバイルのコミュニケーションサービスはキャリアのメールから「LINE」に、二次流通サービスは「ヤフオク!」から「メルカリ」へとトッププレーヤーが移りつつある。スマホ時代の飲食店探しにもその波が押し寄せている。
有効回答数:1303人(全国10~40代の男女:10代318人、20代334人、30代327人、40代324人)
調査方法:テスティーのスマホ向けアプリを活用したアンケートサービス「TesTee」を利用して、インターネット調査を実施