使い方の開拓も黎明期の楽しみ方

 想像の余地は、このSNS自体にもまだまだあると感じます。そもそも開発元の米アルファ・エクスプロレーションは、Clubhouseを「会話と表現の場」として設計したとしていますが、それ以上の細かい用途の規定はありません。利用に当たってのガイドラインは、差別や虐待をしてはいけない、知的財産権を侵害してはいけない、といった当たり前のことが書かれているだけで、このSNSはこのように使うべきだというような押し付けはない。ユーザー発の自由な使い方を待つ、とても今日的なサービスだと思います。

 ですから、まだ黎明期にあるこのSNSをどう使うと面白いのか、どう使うと自分にとって快適か、それぞれで考えたり工夫したりしながら使っていけるのも楽しみなところです。実際、日本でも短い期間で使い道に広がりが出てきました。真剣に意見や情報を交換している人たちもいれば、無料のトークショーをあえて毎晩のように開催して緩さを売りにしている人たちもいる。合唱を楽しむ人たちもいる。会社説明会や周年パーティー、セミナーや相談会を開く企業もあります。

 社内コミュニケーションにも使えそうですよね。プロジェクトチームでルームを作ってiPhoneからつなぎっぱなしにしておき、パソコンで仕事をするようなスタイルです。リモートワーク体制に移行したため、会議未満の雑談の機会が減ったという声をよく聞きますが、そうした課題もこの音声SNSで解決できるかもしれません。

 その用途なら別のアプリケーションでもいいじゃないかといったご意見もあるだろうと思います。それはその通りで、Clubhouseは今あるものを凌駕(りょうが)したり打ち倒したりする存在ではありません。僕は、Clubhouseが定着するとしたら、既存の何かに取って代わるのではなくて、何かを補完し、また自らの足りないところを補完されながらではないかと思います。

「Clubhouseはアイデアを生むのに向くSNS」と言う前刀禎明氏
「Clubhouseはアイデアを生むのに向くSNS」と言う前刀禎明氏

 いずれにせよ、Androidユーザーにはまだ届いていないとはいえ、(サービス利用料やユーザー登録料が)無料かつ簡単なUIでこれだけの人をつないだサービスは久しぶりです。Clubhouseの前にブームになったSNSが何だったか思い出せないほど、数年ぶりに目を見張る勢いで普及し始めています。

 近年ではTikTokもヒットしましたが、TikTokは若者世代に支持される一方、中高年にはあまり浸透していません。加えて、閲覧はしやすくても配信側に回るハードルが高い。人とつながれていると実感できるくらいの反応を得ようと思うと、動画撮影・編集のセンスや技術がある程度必要で、日常的に動画を投稿している人はそこまで多くない印象です。そう思うと、ClubhouseはInstagram以来のヒットになる可能性があります。

 もちろん普及度は現時点ではInstagramと並ぶべくもないのですが、せっかく“みんなが知っている新しいSNS”が出てきたわけです。招待を受けたiPhoneユーザーは、サービスの至らないところを指摘するより、今は積極的に面白がっておくのが吉だと思います。まだ使っていない人も、Clubhouseのことを誰かと話してみるといいのでは? Clubhouseのどこに好感を持つのか嫌悪感を示すのか、反応の仕方で相手のことが見えてくるかもしれません。こんな“使い方”もまた、黎明期のSNSならではですよ。

(構成/赤坂麻実)