新型コロナウイルス感染症の流行で、一気に広まったテレワーク(リモートワーク)。ビデオ会議やコラボレーションツールを使い、社員同士がリモートでやり取りするようになると、社内コミュニケーションの形も変化する。それに戸惑う人も多いのでは? テレワーク時代の新常識を考える。

ビデオ会議が増えると社内コミュニケーションは従来よりも難しくなる(写真/Shutterstock)
ビデオ会議が増えると社内コミュニケーションは従来よりも難しくなる(写真/Shutterstock)

 コロナ禍が長引く中、リモートワークがかなり浸透してきました。感染拡大が深刻化し始めた春から現在まで、もう4、5カ月ほどリモートワーク生活を続けているという人もいるでしょう。この環境での仕事の進め方にも慣れてきた頃ですよね。

 同時に、今まで当たり前だったことがリモートではうまくいかず、戸惑っている人もいるかもしれません。これまで疑問を持たずにしてきたことが、気づかないうちに仕事の質や効率を下げている可能性はあります。特に課題が多いのは、オンラインでの社内コミュニケーションです。

今までの社内コミュニケーションを再編しよう

 オンラインでの社内コミュニケーションというと、メールやチャットなどの文字のやり取り、音声通話、そしてビデオ会議などがあります。ここで大事なのが、日常的なコミュニケーションをどのツールで行うか、きちんと仕分けること。リモートになったからといって、毎日あるいは毎週行われていた社内の定例会議をすべてビデオ会議に置き換えるのは非効率です。

 リモートワークになると、出社していた頃とは違って、就業時間内であってもそれぞれ家のことなど適宜しながら自分で時間を管理して働いているはずです。就業時間をずらしたり、分断勤務にしたりする人も増えていますよね。会議に適した時間、都合のいい時間は、これまで以上に人によってまちまちになります。よって、複数人に対して決まった時間を押さえることの意味がより重くなる。

 そんな中、従来と同じ頻度で会議をしていたら効率が下がります。グループチャットなど、テキストのやり取りで置き換えられるものはそうすべきです。会議自体を丸ごとチャットにしなくても、参加者を絞って会議を開き、これまでオブザーバー的に参加していた人は会議には出ないで後から議事録を確認するとか、柔軟な運用ができると思います。

 それでも必要と判断してビデオ会議を開く際は、参加者それぞれが言いたいことをしっかりまとめておくことが重要になります。会議の参加者みんなが前提として知っておくべきことはコラボレーションツールなどであらかじめ共有しておき、会議では核心の話から入れるといいですね。

 Zoomでのミーティングが無料アカウントの場合に40分でタイムアウトするのは、ユーザーにとっても案外いい決まりかもしれません。Web会議は40分一本勝負にして、その前の20分は各自が準備に当てるほうが効率的なケースもありそうです。

ビデオ会議はテレビに出るつもりで「臨む」

 いつでも隣に同僚がいて、気軽に話しかけられる環境なら会議で言い残しがあってもフォローは簡単です。でも、リモートワークではそうはいかない。会議で必要な情報を交換し、一定の答えを導く必要があります。お互いがせっかく取った時間をムダにしない意味でも、会議を充実させましょう。

 自宅からつなぐからといってのんきに構えず、テレビに出演してプレゼンテーションするぐらいの気持ちで臨んだほうがいいと思います。まさに「臨む」という気持ちが大事。日常生活の延長で参加しない。時間が許せばシャワーを浴びて着替えて臨んでもいいぐらいです。

「ビデオ会議では、対面の会議以上に見た目が大事になる」という前刀禎明氏
「ビデオ会議では、対面の会議以上に見た目が大事になる」という前刀禎明氏

 僕はもともと、あらゆるコミュニケーションは突き詰めればプレゼンだろうと思っています。自分の考えを言葉や身ぶり手ぶりで伝え、それに対して相手の反応がある。僕らの普段の会話は、伝え手と聞き手を随時入れ替えながら、これをくり返しています。

 ビデオ会議でのコミュニケーションは、プレゼンの色合いがなおさら強まります。誰かの言葉に他の誰かが言葉を重ねると聞き取りづらいので、1人が話すときは他の人は黙っている。話す人は一方的に話すことになるので、プレゼンの形に近くなっていくのです。

 このように広義に捉えると、プレゼンテーションは決して特定の部署の特定の人たちだけがすることではありません。社会に出て仕事をしている人の中に、プレゼンの技術が要らない人は一人もいないんです。プレゼンは自分に関係ないと思っていた人、苦手意識がある人にとって、ビデオ会議は自分なりのプレゼンを考え直すいい機会です。

恥ずかしがらずにビジュアルを磨く

 ビデオ会議を含め、オンラインで資料を使ってプレゼンする場合は、スライドの切り替えのタイミングも大事な要素です。紙芝居をするつもりで練習して臨んでもいいくらい。その資料は、オフラインで行うときと同様、文字量は少なめに。ワンスライド・ワンメッセージを基本にしたいですね。

 こうしたプレゼン技術は以前も取り上げましたが、オンラインでは特有の努力や工夫も必要です。特にビジュアルは、これまで以上に注意を払いたいところ。ビデオ会議では、実際に対面しているときより情報量が絞られます。画面に映らない身ぶり手ぶり、匂いや気配、小声で言う冗談やその他もろもろ、カメラとマイクが拾わないものは伝わりません。その分だけ、映る部分のビジュアルが占める比率が大きくなります。会議の参加者の様子から相手の熱量を感じたり、逆に真剣なのか疑問を感じたりしたことはありませんか? 相手もあなたについて同様のジャッジをしています。

 そこで、まずは会議中、他の人と目を合わせてみましょう。ビデオ会議がやっかいなのは、相手の顔(が映る画面)を見ても相手と目が合わないこと。だから、要所であえてカメラを見て、目が合ったような印象を相手に与えるのです。カメラを見ることに抵抗感がある人、カメラを見ていると相手の顔が見えないので不安だという人もいると思いますが、会議中に数回でいいので意識してやってみてください。プレゼンの説得力や、聞く側の集中度を高める効果があります。

 自分自身の見た目も気にしたほうがいいですね。多くの会議アプリでは自分が話している様子が分割された画面の1つにリアルタイムで映りますから、会議中にときどき確認しましょう。思ったより緊張感のない表情をしていたり、逆に不機嫌に見える表情をしていたり、問題点が見つかると思います。テレビなどへの露出が増えた芸能人がみるみるあか抜けていくのと同じで、自分を客観的に見ることによって僕らも自分の見え方を改善できます。

 服装も大事です。基本的にはラフな装いでよしとしている会社がほとんどだと思いますが、Tシャツで話すのと、シャツやジャケットで話すのとで、聞く人が受ける印象は違ってきます。自分の見え方を定義して、ビジネスカジュアルならビジネスカジュアルの、ちょうどいい線を自分なりに探りたいですね。

 それから、会議が始まる前にカメラ映りを確認することも忘れずに。光の当たり方を確かめて、顔が暗く見えないようにカメラの角度をそのつど調整する。背景はごちゃごちゃしないように整理しておくと印象がよくなります。バーチャル背景を使う場合には、背景と一緒に自分が透過されないようにくれぐれもご注意を。

 人によっては、自分の見た目やカメラ映りをあれこれ気にすることに照れがあるかもしれません。でも、この際、その感覚は捨てたほうがいい。会議の相手に失礼のないようにしていることだ、仕事のうちだと思って取り組めば、見え方が変わって、(言いたいことの)伝わり方も変わります。

(構成/赤坂麻実)

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