既成概念が崩れた環境は挑戦に適す

 自らに意識を向ければ、内面の変化も見えてきます。例えば、これまで知らなかったことを新たに知る機会が増えたでしょう。感染症予防という、これまで意識したことのない観点で世の中を見ることになったからです。先日、あるサイトに飛行機の換気システムの仕組みが掲載され、その換気能力が話題になっていました。3カ月前にはほとんどの人にとって関心事ではなかったはずです。

 価値観も変化しつつあります。少なくとも、「働く」とは「出社すること」だと思い込んでいた人は考えが改まったはず。会議が減った企業、チームも多いのでは? 会議に限らず、業務上の取捨選択がしやすくなったのは間違いありません。不要なものを省いていく中で、本当に必要なものが際立って、物事のコントラストがよりくっきりしてきますよね。

新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛で街は人の往来が著しく減った(写真/Shutterstock)
新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛で街は人の往来が著しく減った(写真/Shutterstock)

 こういうときは、挑戦のハードルも下がります。どうしようもない事態に見えるときは、誰もが“正しい”と思う手を見つけにくいとき。だからこそ、あらゆることを試しやすいんです。

 平和なときはちょっとの失敗がその人や会社にとって事件になるかもしれない。無難な策を選びがちです。でも、社会全体が激しく揺れ動いているときならば、誰かがどこかで何かを試して結果が芳しくなくても、どうということはありません。駄目なら駄目で、さっと引けばいいだけです。

 今は発想を転換する好機です。これまではできないと思っていたこと、当たり前だと思っていたことを考え直す。環境や前提条件が変わり、自分自身も変わっているなら、無理だと思ったことが実現する可能性はあります。

激変する世界、至るところにテーマが転がっている

 例えば僕が次にやってみたいと考えたのは、eラーニングの新しいプラットフォーム作りです。全国的な一斉休校の中でeラーニングが存在感を増しています。子供たちのためにプログラムを無償提供している企業も多く、頭が下がります。ただ、僕は科目別に系統立てて学ぶeラーニング以外に、より複合的に学べるプラットフォームがあると面白いんじゃないかと思いました。

 現実に何か問題に直面したとき、数学の公式一つで解決できるようなことはめったにありません。さまざまな知識やスキルを組み合わせて解決を図るはずです。そういったリアルなものの考え方が身に着くような学習プラットフォームがつくれたらと“妄想”しています。これはジャストアイデアのレベル。今すぐ形になるわけではありません。それでもかまわない。人にもよるでしょうが、僕は頭の中を散らかった状態にしておいたほうが新しいアイデアが生まれやすいので、これがいつか別のビジネスに結び付くかもしれないと思っています。

 今はテレビをつけてもネットを見ても、「ステイホーム」の呼びかけと、それでも思うように減らない人の動きを嘆くものばかりです。僕も街中で「不要不急」の外出をしている人を見かければ、残念なことだと感じます。一方で、どうして同じことばかり話題にするのだろうと疑問に思ったりもします。情報は重要ですし、それに接すれば感想を持つのは自然なことかもしれません。ですが、新型コロナウイルス(に関する他人の言動)の“評論家”になることは避けたい。それよりも、ビジネスを含め、自分のことを考え直す。それが可能な状況にある人は、その幸運に感謝して前を向くほうが明るい未来が迎えられそうです。

 皆さんも、この機会に自分が携わっている進行中の企画を、新しい前提、新しい観点で見直してみるのはどうでしょう。考えることは自宅でも一人でも可能です。思索する力を高めましょう。そして、必要に迫られて外出する際には、ぜひ身の回りの変化に目を向けてみてください。コロナ禍そのものは決して歓迎できませんが、せめて訪れた非日常の世界を観察の対象にしてやりましょう。

(構成/赤坂麻実)