学歴偏重、MBA信仰の次に到来したスキル議論

 さて、そもそも「○年後に重要なのはこのスキル」という記事がこんなに注目されるのはなぜか。

 僕は一昔前にまん延した「MBA(経営学修士)を取ればなんとかなる」という発想の流れをくんでいるような気がしてなりません。MBAブームの前には「いい大学を出ていればなんとかなる」かのような風潮がありました。「これさえやっておけば安心」という、よりどころが求められているのでしょうか。

 メディアに上がる記事や講演には「変化の時代を生き抜くには」といったテーマが増えていて、その通りにできないと「生き抜」いていけないかのようなあおり方をするものがあります。そうして人を怖がらせるのは好ましくないやり方で、真面目な人たちが必要以上におびえたり傷ついたりしていないといいなと僕は思います。

 だいたい、ランキング上位のスキルをすべて備える人などいません。これらの中から1つ、2つを備えた人が集まって、チームで強みを発揮し合って仕事をするのが理想型。ラグビーワールドカップで大活躍した日本代表だって、スクラムで輝くパワー自慢もいれば快足を飛ばすトライゲッターもいたじゃないですか。

 もう一つ、「“変化の時代”を生き抜く」といった論調に違和感があるのは、“変化”がどこかから急にやってきて自分たちの前に立ちはだかったように聞こえることです。変化とは訪れるのを身構えて待つのではなく、自分でつくるもの。MacintoshやiPod、iPhoneでパソコンや音楽プレーヤー、携帯電話の世界を変えてしまったスティーブ・ジョブズのような大きな“変化”はなかなか生み出せなくても、心の持ちようを変えることは誰にでもできる。そこから仕事のやり方や考え方、生み出される商品も少しずつ変わっていくわけです。

 僕が言いたいのは、悲観的になる必要はないということ。ないものねだりをしてもしょうがない。みんながそれぞれの能力を生かすこと、それをチームで発揮することがこれからも重要です。

 もし一つだけ大切だと思う資質や努力を挙げるとしたら、この連載でも繰り返してきたように「ラーニングインテリジェンス(学び続ける知性)」だと僕は思います。常識や過去の経験にとらわれず、自分でよく観察してよく考えること。それはどんな職業でも、何歳になっても続けることです。そうすれば先に挙がったようなスキルのいくつかは付いてくるはずです。

(構成/赤坂麻実)