キー・メッセージを磨き上げるのがコツ

 僕がプレゼンで意識していることをもう少し具体的に挙げてみます。1つはスライド作り。最近はスライド作りにも一家言ある人が多いそうで、心理学と絡めた色遣いの解説なども見かけます。それはそれで面白いのですが、枝葉のテクニックに固執するよりは、スピーカーのしゃべりをサポートするために、スライドはどうあるべきか、目的意識を持って考えたいところです。

 その際は、伝えたいメッセージをよく見直すこと。例えば「金融工学で社会を良くしたい」という思いがあるとします。その心意気はいいとして、それをスライドにそのまま書いても、聞こえがいいだけで想起させるものがないので、聴衆には響きません。具体的にどうすることなのか、いかにして実現するのか。掘り下げて掘り下げて、伝えたいことを研磨する工程が重要です。そうして見いだしたメッセージをキー(鍵)に設定し、裏付けるデータや事例などの材料で補強します。

 よく言われることですが、「ワンスライド・ワンメッセージ」も理にかなっていると思います。情報を盛り込みたい気持ちは分かりますが、聴衆がスライドを読んでばかりで話を聞いてくれなければ、資料を配ったのと同等の効果しか得られません。せっかくプレゼンしたのに、それでは残念ですよね。スライドはシンプルに、文字量は少なめに。目に飛び込んできて直感的に理解できるものが理想です。

カメラマンにいい写真を撮らせるつもりで

 実際にプレゼンするときは、スピーカー自身の見せ方も大切です。内容が第一とはいえ、これもプレゼンの印象を大きく左右する要素だからです。

 まず姿勢。見た目の印象だけでなく、声の出方もまるで変わってくるので、背すじを伸ばし胸を開くイメージで話しましょう。スピリチュアルな話にはしたくないのですが、体からエネルギーを発して届けるつもりで。常日ごろから肩甲骨をよく動かしておくと、堂々として見える姿勢を取りやすいです。

「猫背になると声もあまり通らなくなるし、自信もなさそうに見える。胸を開いた方がいい」と前刀禎明氏
「猫背になると声もあまり通らなくなるし、自信もなさそうに見える。胸を開いた方がいい」と前刀禎明氏

 視線も大事です。原稿を読んでも構いませんが、ここぞというときは語尾だけでも顔を上げて聴衆と目を合わせる。それが一度もないと、誰に向かって話しているのか分からなくなります。(実際はない場合でも)カメラを意識するといいかもしれません。発表会やプレスカンファレンスでは、カメラマンが何度シャッターを切っても“イケてる”ショットが一枚もないようだと、聴衆から見ても「なんかピリッとしない」という印象になるものです。

 見落としがちなのが、洋服のフィッティング。特にスーツですね。オーダーできればいいですが、それが難しい場合は時間をかけてたくさん試着して、自分の体形に合うものを探しましょう。ノーネクタイの場合には、シャツの襟に注意。ネクタイをすることが前提で作られているシャツだと襟がよれがちなので、シャツを選ぶときに襟の立ち具合もチェックしてください。

 ただ、こうした細かい話もプレゼンの中身があってこそ。考え方はシンプルで、伝えたい内容に合わせて自分に合った手法を選び取っていくことです。プレゼンは聴いてくれる人とのコミュニケーションですから、正解はありません。怖がらず楽しんで、自分のスタイルを確立してください。

(構成/赤坂麻実)