「らしさ」の再定義がブランド確立につながる

 自社やその商品について、「らしさ」を考えたり語ったりすること自体は、本来とてもいいことです。企業がブランドを構築し、維持していく上で、最初に考えるべきことだし、考え続けるべきことです。強いブランドと聞いてすぐに思い浮かぶような会社は、自分たち「らしさ」を明確に定義して社内で共有しています。例えば、「ディズニー」。米ウォルト・ディズニー・カンパニーは、企業公式サイトのトップページに自社のミッションを載せています。

(写真:George Sheldon / Shutterstock.com)
(写真:George Sheldon / Shutterstock.com)

“The mission of The Walt Disney Company is to entertain, inform and inspire people around the globe through the power of unparalleled storytelling, reflecting the iconic brands, creative minds and innovative technologies that make ours the world’s premier entertainment company.” (編集部訳:ウォルト・ディズニー・カンパニーのミッションは、比類無き物語の力を通じて、世界中の人々を楽しませ、情報を提供し、刺激することです。そこには、私たちを世界一のエンターテインメントカンパニーたらしめる象徴的なブランド、創造性あふれる精神、革新的な技術が生かされています)。

 ディズニーはこの短い文章を決めるのに、多くの時間と議論を要したはずです。そして、これを最上位に置いて、企業としての事業方針や行動規範を定めていく。その結果、自社ブランドの特徴を明確に打ち出し、顧客(ゲスト)に愛されて、企業として成功するに至っています。このような取り組みは意識の問題ですから、どの企業にも始められるはずです。

 いきなり大きなことを考えるのが難しければ、トレーニングをしましょう。僕がコーチングを請け負っている企業で先日、若手社員に課したのは、分厚い自社製品のカタログの中から、好きな製品を選ぶというもの。単に選ぶだけでなく、なぜ自分はそれが好きなのか、「なんとなく」以外の言葉で説明を試みてもらいました。こうしたことから始めて、ものを考えるクセをつけ、自社やそのブランドの「らしさ」を社員一人ひとりが定義してみると、企業のブランディングはそれだけで一歩前へ進むと思います。

 先に、取締役が「それはちょっとウチらしくないかな」と若手社員の意見を却下してしまうケースの話をしましたが、実は「らしさ」を改めて定義する過程で生きるのは、ベテラン社員の力です。変化が激しい時代に、過去の経験はあまり役立たないと思われるかもしれませんが、蓄えた知見は思考の材料になりえます。コンピューターに例えれば、ディープラーニングの材料がそろった状態です。あとは前例主義や思考停止を捨てて、創造的知性を働かせること。あのとき経験した「あれ」や別のときに見聞きした「これ」にこだわるのではなく、両者を結びつけて考えることで新たな視点を生み出せるかもしれません。

 だからこそ、会社でどのような立場にいる人も、ぜひ時間を作って考えてほしい。「らしさ」を追求してほしい。自分の言葉で再定義できれば、働き手としてのあなた自身が強くなるし、ブランドも組織も強くなります。

(構成/赤坂麻実)