スライドがごちゃつく「s」の年のプレゼン

 発表の様子にもそれは表れています。小さな文字がびっしり並んだスライドがやたら多い。本体の各部から線を引いて、この部分はこんな特徴があって、と図解したものもあります。イメージカットや動画では伝えられることが少ないから、どうしても文字情報が過多になってしまう。「新しいiPhoneを使えば、こんなに便利で楽しい生活が手に入る!」と訴求できる特徴がないことの表れです。

iPhone XSのプレゼンの様子。スペックをぎっしり並べた
iPhone XSのプレゼンの様子。スペックをぎっしり並べた

 スライドもビジーなら、フィルが終始難しい顔をしているのも気になります(笑)。相変わらず、技術チームやサードパーティーなど、いろんな人が入れ代わり立ち代わりプレゼンするスタイルもいかがなものか。内容盛りだくさんな感じを無理に演出しているようで、特に今回のように発表内容が地味なときは、いたたまれないものがあります。提示された利用シーンも、かなりニッチなところに入り込んでいましたよね。

利用シーンの1つとして提示されたプレゼンにはかなりニッチな用途も。バスケットボールのシュート成功率などを分析するアプリなどを紹介した
利用シーンの1つとして提示されたプレゼンにはかなりニッチな用途も。バスケットボールのシュート成功率などを分析するアプリなどを紹介した

 とはいえ、iPhoneでは、「iPhone 5」から「iPhone 6」などナンバリングが変わる新機種発表に比べて、「iPhone 6」から「iPhone 6s」のようにナンバリングはそのままに「s」が付く新機種発表のほうが進化が小幅なのがお約束。特に落胆はありません。今回の新機種で新たにユーザーを獲得できるとは思わないけれど、既存ユーザーにより良い端末を用意することはできたと思います。

 今年は「s」の年でしたが、僕は来年の新機種に大きな進化を期待しています。2007年にiPhoneが発売されて12年。そろそろ、新UIを実現してほしい。せっかく「Face ID」(顔認証機能)を採用しているので、画像認識処理の技術を応用して、例えばウィンクでメーラーを立ち上げることができるとか、便利であっと驚く機能を装備してもらいたいです。ジェスチャー入力と音声入力の組み合わせを研究していけば、きっと想像を超えたものが生まれるはず。アップルには、アップルだから寄せられる期待に、久しぶりに応えてもらいたいですね。

(構成/赤坂麻実)

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2018年9月19日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています