グーグルに学ぶ「シンプル化」という考え方

 グーグルのサービスは、生活をシンプルにするアシストをするというコンセプトだから、個々のハードやサービスの機能は絞り込んでも使い方を分かりやすく、価格はリーズナブルに、デザインは主張しすぎず、生活空間になじみやすく作られているのだと思います。また、ハード単体で勝負していないことがハードの価格の抑制につながり、結果的にハード単体の売り上げにプラスに働くこともある。加えて、技術のオープン度が高いので、サードパーティー品もどんどん世に出る。ユーザーから見ると、一般的なメーカーの製品より無難で、“お得”に感じるでしょう。そうしてユーザー規模を拡大していき、グーグルのプラットフォームビジネスがますます成功するという循環になっているのです。

 機能・性能はある程度割り切り、部屋に置いて違和感のないデザインやリーズナブルな価格に重点を置いてハードを作るという意味では、スウェーデン・イケアも今後が気になる存在です。家具やインテリアが中心でしたが、最近はBluetooth接続のワイヤレススピーカーやAI対応のスマート照明などを発売しています。今後、独自のスマートスピーカーなどを売り出すことがあれば、デジタル製品の市場でもかなりの存在感を放つようになりそうです。

 こうして話をしてきたからといって、私は日本メーカーがグーグルっぽいものやイケアっぽいものを作ることを願っているわけではありません。グーグルやイケアから学べるのは、自らの事業を再定義すること、“シンプル化”することです。すでにある製品をベースに考えて機能などを無理やりそぎ落とすようなことではありませんよ。本当のシンプル化は、製品やビジネスの目的を究極的に明確にすること。そうすれば、やるべきことはおのずと定まって、あってもなくてもいいようなものがついてくる余地はそもそもなくなってくるはずなんです。日本のメーカーは、本当に価値あるものを生み出すために、いま何を目指すべきか、目標を再定義するべきですね。

(構成/赤坂麻実)

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2018年5月25日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています


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