吉田流でやり遂げてほしい2つのこと

 社長交代会見で、平井さんは吉田さんのことを「進むべき方向や何をすべきかという考え方が似ている」と評しました。吉田さんも「やり方は違っても平井社長と方向性は同じ」と述べていて、新社長が現社長の路線を維持するのは間違いないところだと思います。「自分は短期の登板を前提に次期社長候補を検討した結果、選ばれたのだ」という趣旨の発言もあって、吉田さんとしては、平井さんと次代の“つなぎ”の役割を果たすつもりでいるのでしょう。

 それはそれで結構。ただ、たとえ1期3年間の社長業だとしても、吉田流でやり遂げてほしいことが2つあります。1つは先の述べたように「KANDO/感動」を実現すること。吉田さんは「クリエーターに近いところ」と「ユーザーに近いところ」への投資を増やすと明言しました。平井さんが提唱した「ラストワンインチ」と言わず、「ゼロインチ」まで、ユーザーの手元までこだわって、手を抜かずに製品を作り上げてもらいたいですね。

社長交代を発表したソニーの2018年2月2日の会見から
社長交代を発表したソニーの2018年2月2日の会見から

 そのために絶対に変えるべきなのは、いかにも大企業病っぽい分業の在り方。縦割りの組織で1つの製品を分業して作っているから、全体像が見えなくなっているのではないか、と思います。

 何度も例に出してしまって開発チームには申し訳ないですが、せっかく先進的なテレビを作っても、リモコンが旧態依然で安っぽかったら台無しなんですよ。ユーザーの手元にはリモコンやパッケージ、アプリなど、製品にまつわるすべてのものが届きます。それら全体の印象や使い勝手で、その人にとっての製品の良しあしが決まるのです。テレビ本体を完璧に作り込んだから最高の製品だ、ということにはなりません。

 だから、その製品にまつわるすべてで統一された体験価値を提示してほしい。それには、社長なり役員なり、あるいは現場のリーダーなりが、付属品なども含めた製品全体を一気通貫で監督する必要があるでしょう。昔はよかった、昔の人は偉大だったとは言いたくありませんが、創業者の井深(大)さんや盛田(昭夫)さん、そしてスティーブ(・ジョブズ)はやっていたことです。吉田さんにもやってほしいと思います。

 できれば、新しい一歩を大きく踏み出す製品が見たいですね。リモコンのことをやいやい言いましたが、リモコンのないテレビができたら、それが一番いい。これまでの延長線上ではない、新しいライフスタイルを想起させてくれる製品、短く言えばワクワクさせてくれる製品を送り出してもらいたいです。