ソニーとパナソニックは後手に

 ソニーは、4K有機ELテレビの「A8F」シリーズ と8K世代の画像処理エンジン「X1 Ultimate」を発表しました。A8Fは昨年のCESで発表した「A1」シリーズと性能や機能は大きく変わらず、デザインが一番の変更点です。A1では、パネルを後ろへやや傾け、それを背面に設けたウーハー内蔵のパーツで支えていました。前からはスタンドが見えないデザインです。一方、A8Fは小型のスタンドでテレビを支え、ウーハーは背面に貼り付ける格好にしています。A1に比べて奥行きを浅くすることに成功しましたが、その分、スタンドが前にはみ出してしまいました。

ソニーが発表した4K有機ELテレビの「A8F」シリーズ(写真/山本敦)
ソニーが発表した4K有機ELテレビの「A8F」シリーズ(写真/山本敦)
「A8F」シリーズはスタンドのデザインを変更して奥行きを浅くした(写真/山本敦)
「A8F」シリーズはスタンドのデザインを変更して奥行きを浅くした(写真/山本敦)
前モデルの「A1」シリーズは背面にウーハー内蔵のパーツが付いていた。背面のデザインは洗練されていたが、奥行きがあった
前モデルの「A1」シリーズは背面にウーハー内蔵のパーツが付いていた。背面のデザインは洗練されていたが、奥行きがあった

 僕はA1の存在感のあるスタンドにも不満だったけれど、A8Fのデザインもいただけないなと思います。ソニーのテレビでこの手のスタンドを採用するのはどちらかといえば中低価格帯の機種です。せっかく有機ELテレビを買おうというときに、このデザインを選びたくなるものでしょうか。A1だと奥行きの問題で自宅に設置できないという層をカバーする狙いなのでしょうが、デザイン的にはA1のほうが洗練されていたという皮肉な結果になってしまいました。もう少し考えようがあったはずです。

「今さら画質で競争したって、感動は生まれないと思うんだけど……」と前刀氏
「今さら画質で競争したって、感動は生まれないと思うんだけど……」と前刀氏

 UIに関しては、Googleアシスタントに対応しており、リモコンの該当ボタンを押して「OK、グーグル」と発話すれば、音声入力ができます。公式動画では、男性がマイクのようにリモコンを持って、天気予報をテレビ画面に表示させたり、エアコンの温度設定を指示したりする様子が紹介されています。自宅でテレビ用リモコンを肌身離さず持ち歩いているかのような描写が、やはり不自然ですよね。LG同様、リモコンから発想を切り替えてほしいところです。

 パナソニックは、4K有機ELテレビ「FZ950/FZ800」を発表しました。画像処理技術や音響技術をウリにしていて、AIは導入せず。欧州で販売するUltra HD対応のBlu-ray Discプレーヤーは、Googleアシスタントとアマゾンの「Alexa」に対応させていますが、テレビには載せなかったのですね(関連記事:スマートスピーカーは序の口 AI時代の家電はどうなる?)。

技術ありきで考えず、感動ポイントを探せ

 LGも道半ばですが、ソニーやパナソニックの取り組みはさらに物足りないといわざるをえません。ちなみに、日本発売はないでしょうが、サムスン電子も独自AI「Bixby」を搭載した8K画質の量子ドット液晶テレビをCESで発表しています。ソニーとパナソニックは、CESのプレゼンテーションで両社とも、テレビに関しては独自の画像処理エンジンによる映像の良さを前面に押し出していました。ですが、DVDとBlu-ray Discほどの画質差があるならともかく、4Kや8Kのレベルまで来て今さら高画質競争をしたところで、果たしてそこに感動が生まれるでしょうか。

 この連載では何度もくり返していますが、高度な技術が必ずしも感動を生むとは限りません。逆に技術自慢に陥れば、感動からはほど遠い製品が出来上がることもあります。この製品の感動ポイントはどこか、新しい体験やライフスタイルを生み出す仕掛けはどこにあるか――。僕は製品を見るときにそれを第一に考えるし、日本のメーカーにもそうあってほしいと強く願っています。

(構成/赤坂麻実)

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2018年1月26日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています