バルミューダのレンジにギター音は必要か?

 最後は、機能を絞り込んだバルミューダのオーブンレンジ「BALMUDA The Range」。スチーム機能などを搭載せず、電子レンジ本来の機能であるマイクロウェーブ調理にフォーカスした製品で、デザインもシンプルです。バルミューダはこれまで、その製品の本来の目的である機能を追求するものづくりをしてきた印象があります。例えば、「最高の香りと食感を実現する」というトースター、「自然界の風を再現する」という扇風機がそうですよね。

バルミューダのレンジ「BALMUDA The Range」。操作音などに、プロミュージシャンに依頼して録音したギターやドラムの音を使っていることが話題になった
バルミューダのレンジ「BALMUDA The Range」。操作音などに、プロミュージシャンに依頼して録音したギターやドラムの音を使っていることが話題になった

 ところが、オーブンレンジでは、最も話題になったのが操作音でした。操作をしたり調理が完了したりしたときに、一般的な電子音ではなく、ギターやドラムの音が鳴って、それで「キッチンを楽しくする」といいます。ただ、僕からするとこれは余計な仕掛けのように思う。操作音を珍しいものにしたところですぐに慣れ、やがては飽きてしまうのではないでしょうか。

 製品の魅力を高めるのに必要なのは、「想像を喚起する」ことや「感動を持続させる」ことだと思います。そしてそれは、製品のうわべではなく、本質的な機能によって生み出されるものです。実際、バルミューダが先に出したトースターは「最高の香りや食感ってどんなものだろう、食べてみたい」とユーザーの想像をかきたてます。そして、毎日おいしいトーストが食べられるのは、まさに持続する感動でしょう。

バルミューダのトースター「BALMUDA The Toaster」は「最高の香りと触感を実現する」が売り
バルミューダのトースター「BALMUDA The Toaster」は「最高の香りと触感を実現する」が売り

前刀的ものづくりの三つの鉄則

 ものづくりには踏み外してはいけないポイントが3つあると思います。1つは、技術ありきで考えるのではなく、ユーザーの使い勝手や感性に寄り添うこと。2つ目は、工夫やこだわりが本質的であること。その製品が何をするためのものかを意識しながら作るべきです。3つ目は、インターフェースの質感や満足感にこだわること。ユーザーの一番そばにあって、頻繁に目にしたり手に触れたりする部分をおろそかにしてはいけません。

 こうして整理してみると、今回取り上げた3製品はこの3つのポイントのどこかに難があるように思います。3製品ともチャレンジングで、魅力を感じられる製品です。だからこそ「惜しい」と感じました。

 今後またすばらしい製品に出会えることを願い、今回は期待をこめて「惜しかった」と言いたい。来年もこの物差しを使って、さまざまな製品を見ていきたいと思います。

(構成/赤坂麻実)

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2017年12月22日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています